『Destiny』の楽曲めぐるBungie訴訟に決着、解雇された『Halo』シリーズ作曲家が完全勝利

『Halo』シリーズで知られる作曲家Marty O’Donnell氏と彼の古巣Bungieとの長きにわたる法廷闘争は、原告の勝利という形で終焉を迎えた。O’Donnell氏には『Destiny』フランチャイズへの楽曲使用料が約束され、初回分として14万2500ドルの示談金を勝ち取った。

『Halo』シリーズで知られる作曲家Marty O’Donnell氏と彼の古巣Bungieとの長きにわたる法廷闘争は、原告の勝利という形で終焉を迎えた。O’Donnell氏には『Destiny』フランチャイズへの楽曲使用料が約束され、初回分として14万2500ドルの示談金を勝ち取った。2014年4月の解雇を発端とした訴訟は昨年6月に続き今回で2回目。原告の主張が全面的に認められる形で決着がついた。

 

デスティニー、怒りの交響組曲

海外メディアVentureBeatのジャーナリストDean Takahashi氏が公開した裁判所文書には、一連の法廷闘争に関する経緯が事細かに記されている。Eurogamerによると、2014年4月にO’Donnell氏がBungieを突如解雇された背景には、『Destiny』の販売元Activisionへの不満があり、結果としてBungie上層部や社長Harold Ryan氏との間に確執が生まれていたとのこと。『Destiny』の楽曲制作を依頼された際には、Bungieが計画を変更したことに激怒。今後のフランチャイズ展開に10年間使用する目的で、「天球の音楽」(古代ギリシャから伝わる、天体の運行による奏でられる宇宙の和声)になぞった8楽章の交響組曲の作曲を求められたという。O’Donell氏は別々に手掛けることを意図していたが、Activisionはほとんど聞く耳を持たなかったとされている。

Marty O'Donnell氏Image Source: Wikipedia
Marty O’Donnell氏
Image Source: Wikipedia

後に、「E3 2013」で披露された『Destiny』のトレイラーにおいて、Activisionが楽曲を独断で差し替えたことをO’Donnell氏が公然と批判。関係はさらに悪化した。これに対する報復として、同氏はプレスブリーフィングの妨害行為に走る。Bungieの想像理念を保護するという大義名分のもと、トレイラーがオンラインへ流れるのを阻止しようとしている。しかし、チームや作品に損害を与えただけでなく、ネット上にネガティブな議論を巻き起こし、さらにはRyan氏の指示を無視したとして、Bungie上層部にとってはこれが悩みの種となったようだ。そのほか、O’Donnell氏がBungieの利益のためではなく、自身のための「天球の音楽」に固執しているのではないかとの疑惑までかけられていたとのこと。社長であるRyan氏はこの時点でクビを切りたかったようだが決断は保留されている。

その年、O’Donnell氏が夏期休暇から戻った際、Bungieはプロジェクトに対する期待通りの成果が見られないと判断。2014年4月、同氏を解雇するに至っている。彼の会社株式は全て没収されていた。O’Donnell氏はこの処遇を不当として、同年6月にBungieの社長Harold Ryan氏を相手取り提訴。その後、原告の勝訴で決着している。Bungieは、O’Donnell氏に会社株式を返還するとともに、未払いの報酬と損害の補償としておよそ9万5000ドルの支払いを命じられた。今回、『Destiny』の楽曲使用をめぐる訴訟が落着したことで、一連の法廷闘争は原告の主張が全面的に認められる形で終幕を迎えることになった。

今年6月、Marty O’Donnell氏は、Airtight GamesやSucker Punch Productionsのベテランクリエイターとともに、新スタジオHighwire Gamesを立ち上げたことを、自身のTwitterアカウントにて報告していた。『Halo』を象徴する楽曲の数々を生み出した巨匠の次なるステージに期待が集まる。

Ritsuko Kawai
Ritsuko Kawai

カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー。塾講師、ホステス、ニュースサイト編集者を経て、現在はフリーライター。下ネタと社会問題に光を当てるのが仕事です。洋ゲーならジャンルを問わず何でもプレイしますが、ヒゲとマッチョが出てくる作品にくびったけ。Steamでカワイイ絵文字を集めるのにハマっています。趣味は葉巻とウォッカと映画鑑賞。ネコ好き。

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