「パシフィック・リム」や「ヘル・ボーイ」などで知られる映画監督ギレルモ・デル・トロ氏は、今後ゲーム業界とは距離を置く考えであることを明らかにした。デル・トロ監督は2010年末に『Insane』、また昨年には『P.T.』を通じ『サイレント・ヒル』新作の制作へと参加することを表明していたが、いずれもプロジェクトは頓挫する結末を迎えている。デル・トロ監督は「もしまた別のビデオゲームに参加したら、第三次世界大戦が勃発するよ」と、自虐気味に海外メディアShacknewsに語っている。
7月9日から3日間にわたりサンディエゴで開催されたComic-Con 2015にて、デル・トロ監督は「自分がビデオゲームのアルバトロス(重荷、障害)であることは証明されただろう」とコメントした。「THQに参加したら、THQが壊れる。小島に参加したら、小島がコナミを去る(※)。決めたんだ、誰の人生も破壊しないために、ビデオゲームには二度と関わらない。そうでもしないと、私が誰かのもとへと参加して、その人の家は爆発かなにかしてしまうんだ」。
※ 小島プロダクションは解散され本部の部署へと統合されているが、小島監督自身は2015年8月現在もコナミに勤めている。
デル・トロ監督がビデオゲーム業界に関わり始めたのは2010年末からだ。Spike Video Game Awardsにて正式発表された『Insane』は、3部作のビッグプロジェクトとして『Saints Row』などで知られるVolition Incと共に開発が進められていた。ところが2012年8月、THQが経営状態の悪化と共に『Insane』の開発中止を発表し、権利をすべてデル・トロ監督のもとへと移譲。その後、デル・トロ監督は『Insane』を実現すべく複数のパブリッシャーと話していることを示唆していたが、『Insane』の続報は久しく届けられていない。
『サイレント・ヒル』新作として開発が予定されていた『Silent Hills』は、ちょうど1年前のgamescom 2014を通じて正式発表された。謎のホラーアドベンチャーゲームとして配信が開始された『P.T.』をクリアすると、俳優ノーマン・リーダスの3Dモデルとギレルモ・デル・トロ監督のクレジットが登場するという仕掛けで、多くの関係者とファンの度肝を抜いた。開発は今年のE3へ向け順調に進んでいたが、のちに小島プロダクションの本部への統合と時期を同じくして、コナミは『Silent Hills』の開発中止を発表している。
立て続けにゲーム業界の悲劇に出会ったデル・トロ監督だが、それでもゲームの仕事をしてきたなかで、学べることは多くあったと伝えている。
小島さんに関しては、彼はマスターだったからね。我々は友人であると喜んで言えるし、私は彼の仕事を愛している。今後も友人として私は彼から学んでいくだろう。だが私は違う……もし別のゲームに参加したら、第三次世界大戦が勃発してしまう」
なおデル・トロ監督は自身の作品がベースとなったゲームに関しては今後登場する可能性があるとしており、あくまでもゲーム業界にクリエイターとして今後関わるつもりはないということだ。