消えた家族を探すADV『Gone Home』国内PS4にて日本語版がついに購入可能に。計画立ち消えから一転、熱い想いにより実現


Majesco Entertainment Companyは11月2日より、PlayStation 4向けに『Gone Home: Console Edition』の配信を開始した。本作には日本語字幕が収録されている。価格は2700円となっているが、PlayStation Plus加入者はフリープレイタイトルとして11月から無料で遊ぶことができる。

『Gone Home: Console Edition』は一人称視点で展開されるアドベンチャーゲームだ。長期旅行から故郷へと帰ってきた主人公ケイティを待ち受けていたのは、誰もいなくなった実家だった。プレイヤーはケイティを操作して家の中を探索し、真相を追うことになる。

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家の中には多数のインタラクティブ要素が用意されており、プレイヤーは置物や留守番電話などを調べ、家族にいったい何が起きたのかを紐解いていくことになる。「家」という閉じられた空間で証拠の品や情報を頼りに物語を読み進める進行形式や、大きな展開はないながらも先が見えないシナリオが好評を呼び、同作はいくつものアワードを受賞してきた。オリジナルの『Gone Home』は2013年に発売、コンソール版も北米では今年1月にリリースされているが、翻訳を担当した伊東龍氏のブログによれば、今回の日本国内での発売までには紆余曲折があったようだ。

『Gone Home』が発売された約半年後、国内では有志による日本語訳が公開された。担当したのは、翻訳業界で活躍されている伊東龍氏と武藤陽生氏で、かなり贅沢な有志訳だったといえるだろう。伊東氏によれば、もともと『Gone Home』は多言語に対応する余裕がなく、開発者であるSteve Gaynor氏が有志訳を募集していたのだという。こうした経緯で伊東氏と武藤氏の2名は有志訳の作成に携わることになった。この訳はGaynor氏にも認められ、手動で導入する手間はあるものの、事実上公式訳ともいえる存在として扱われてきた。

それから時は経ち、オリジナル版のヒットの後押しを受けて、今年1月に北米でPlaySation 4/Xbox One向けの『Gone Home: Console Edition』が発売。これらのエディションには伊東氏・武藤氏が手がけた日本語字幕が含まれており、晴れてコンソール上で日本語版が遊べるようになった。しかしこの『Gone Home: Console Edition』は日本のPlayStationストアでは販売されなかった。その理由をGaynor氏づてに聞いたという伊東氏は、「日本における売り上げの見込み、CERO等の審査その他諸々に必要となる費用・リソースを検討した結果、パブリッシャーより日本展開は見合わせるという判断が下された」と説明しており、日本でのリリースされる可能性はゼロになったかと思われた。

しかし、この事態を見て動いたのがソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のローカライズプロデューサーである石立大介氏。伊東氏の記事を読んだ石立氏は、日本でのリリースに協力を申し出た。前出のGaynor氏と連絡をとり、SIEのサポートのもと、伊東氏・武藤氏はもう1度翻訳を見直し、最終的に今回の発売へと至ったようだ。

『Gone Home: Console Edition』の日本国内での発売は、さまざまな人の思いによって実現したといっても過言ではない。ブログの投稿を読めば、伊東氏が2014年から一貫して『Gone Home』へ並々ならぬ熱い思いを持っていたことがわかる。翻訳者の2人やSIEの石立氏、そしてもちろん開発者のGaynor氏がいたからこそ、『Gone Home』が日本国内のPS4でもプレイできるようになったといえる。

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なおローカライズでは、日本語字幕への翻訳のみならず、「ゲーム内に登場する雑誌やパンフレットなど、オーバーレイの字幕とその下のグラフィックの文字の位置を極力同じ位置に揃えて対応関係をわかりやすくする、手書きによる人物の差異を文字色を変えて補う」など細かい点ににも注意しており、かなり凝ったローカライズをほどこしている。一度はプレイしたというユーザーも、ぜひ『Gone Home』を手に取ってみてはいかがだろうか。

※ 同記事においては伊藤龍氏よりブログ内容の引用の許可をいただいております。