ゲームエンジン「Godot Engine」向け製品を手がけるW4 Gamesは9月9日、Nintendo Switch/PS5/Xbox Series X|S向けの開発をおこなえるミドルウェア「W4 Consoles」を、早ければ10月から提供開始することを明らかにした。海外メディアGame Developerが報じている。
W4 Gamesは、Godot Engineの開発者であるJuan Linietsky氏やRémi Verschelde氏らによって設立された企業で、同ゲームエンジンのエコシステムを強化するための製品・サービスを手がけている。なお、Linietsky氏らは今もGodot Engineを手がける非営利団体に所属しているが、営利企業であるW4 Gamesとの利益相反には配慮して活動しているとのこと。NDAにより保護された技術を除き、可能な限り多くのツールをオープンソースコミュニティに還元するよう努めているそうだ。
Godot Engineは、PC/モバイル/Web向けゲームおよびアプリを制作できる2D/3Dゲームエンジンだ。前出のLinietsky氏が、かつて自身のスタジオのために手がけた内製エンジンをルーツとし、現在はオープンソースとして提供。ユーザーは完全無料で利用できる。同ゲームエンジンの開発はコミュニティ主導でおこなわれ、かかるコストは寄付によって賄われている。
同ゲームエンジンを用いて開発される作品は年々増加傾向にあり、人気作も登場してきている。その中には、PC向けにリリースされたのち、コンソール向けに展開される例もある。ただ、Godot Engine自体にはコンソール向けビルドを作成できる機能は用意されていない。そのため、たとえば『Brotato』であればSeaven Studio、『Cassette Beasts』はPineapple Worksといった外部企業がコンソール向けに移植をし、リリースに漕ぎ着けている状況にある。
実はGodot Engineの開発元は、コンソールに公式対応する考えがないことを明らかにしている。これは、同ゲームエンジンがオープンソースのプロジェクトとして開発・提供されていることが背景にあり、クローズドな各コンソールのSDK(ソフトウェア開発キット)の取り扱いにあたって、ライセンスおよび法的な問題が存在することが理由のひとつ。また限られた開発リソースを、その対応に振り分けることはできないという判断もあるとのこと。
W4 Gamesでは上述した問題を解決すべく、各コンソールメーカーから承認を受けたミドルウェアとして「W4 Consoles」を開発。Godot Engine(バージョン4以降)で開発したゲームを、自身でNintendo Switch/PS5/Xbox Series X|S向けにエクスポートできる機能を提供する製品だ。これまでにNintendo Switch/Xbox Series X|S向けの早期アクセスプログラムが実施されており、このたびPS5対応を加えて、早ければ10月から正式提供開始されることが明らかにされた。
「W4 Consoles」は、開発チームの規模に応じたStarter(最大8人)・Pro(最大20人)・Enterprise(無制限)の3つのプランが用意され、料金は対応プラットフォーム数により異なる。たとえば、Starterプランで1つのプラットフォーム向けのみに開発する場合は、年間800ドル(約11万4000円)。Proプランであれば年間4000ドル(約57万円)だ。また、Starterプランで全3プラットフォーム向けに開発する場合は、年間2000ドル(約28万6000円)となる。開発するゲームの数には制限はなく、またゲームの売り上げに応じたW4 Gamesへの支払いなどは存在しない。
利用者には、チュートリアルや関連資料が提供されるほか、ソースコードへのアクセスも可能。自身でカスタマイズ・最適化することができる。また、Proプラン以上では特別なサポートも提供されるとのこと。詳細は公式サイトを確認してほしい。