ゲーム会社ジェムドロップ、“中小ながら”新卒初任給27万円に改定+既存従業員も底上げ。大丈夫なのかを訊いた

ジェムドロップの従業員数は88名。中小ゲーム会社といえる規模である。100名以下の従業員数の会社ながら、新卒の初任給を27万円に設定したわけだ。

ジェムドロップ代表取締役の北尾雄一郎氏は4月15日、同社の新卒社員の初任給を27万円に引き上げたことをこっそり告知した。基本給27万円の対象スタッフは「アーティスト、ゲームデザイナー、ゲームプログラマー、サウンド、社内SE」。中小ゲーム会社としては挑戦的な試みである。北尾氏に話を訊いた。

ジェムドロップは、東京・調布に拠点を構えるゲーム会社だ。かつてトライエースなどに在籍していたプログラマーの北尾氏が2013年に設立。コンソールゲームやソーシャルゲーム、VRゲームなどさまざまなゲームに携わってきた。

制作全般に携わった作品でいうと、『狼と香辛料VR – Spice and Wolf VR -』や『スターオーシャン セカンドストーリー アール』などがあげられる。またインディーゲームの開発協力もしており、『天穂のサクナヒメ』への技術協力や『PICO PARK 2』の開発全面協力も実施。自社パブリッシングもしており、過去作としては『COGEN: 大鳥こはくと刻の剣』があげられるほか『ホロの花札』の自社開発・販売も予定している。

数年前からゲーム業界では、大手を主にスタッフの賃上げが実施されている。一部会社は賞与分を基本給に振り分けるといった動きがあるものの、ともかくお金の計算は基本給をベースにされることが多く、基本給が上がることによるメリットは大きい。

多彩な実績を誇るものの、ジェムドロップの従業員数は88名。中小ゲーム会社といえる規模である。100名以下の従業員数の会社ながら、新卒の初任給を27万円に設定したわけだ。雇用は裁量労働制であり月給には40時間分の残業手当なども含まれているそうだ。詳細は採用サイトを参照してほしい。

筆者がざっと確認するかぎりでは、この規模(100名以下、あるいは100名前後)のゲーム会社で初任給27万円以上というのはあまり見ない。ジェムドロップのような受託開発をやっている企業にとっては、「人件費を抑えること」で利益を上げるのが重要になるはず。なぜこうした初任給引き上げをしたのだろうか。北尾氏に話を訊いた。

――新卒給与を改定した理由を教えてください。

北尾氏:
昨今の物価上昇が主な要因ではありますが、純粋に開発会社としても基本給を上げて行くことは必要で、スタッフには日々の生活に少しでも安心してもらいながら働いて欲しいという願いも含まれています。

――御社は大別すると中小規模になると思いますが、その規模で新卒初任給を上げるのはリスクもあるのでは。大丈夫でしょうか。

北尾氏:
中小ではありますが、若い方にもしっかり活躍して欲しいので後先よりも気持ちが先行している部分があるかと思います。とは言え、もちろん物価の関係から、クライアントさんと開発費について費用増加の調整をご相談させて頂くなどご協力も頂いております。

――こうした新卒の初任給引き上げの人においては、すでに在籍中の人の扱いが議論になります。御社にもともといるスタッフも、新卒初任給引き上げにあわせて底上げされているのでしょうか。

北尾氏:
もちろんです。社歴等によりますが3~10%ほどベースアップが実施されています。

――なるほど、ありがとうございました。

今のゲーム業界では、開発ラインの減少は傾向としてあり採用が少なくなっている会社はあるものの、それぞれの規模は大きく人材は争奪戦である。社会全体として初任給は上がっている傾向にあり、ゲーム業界だとなおさら。今後も人材を獲得するための争奪戦は続きそうである。詳細はジェムドロップの採用サイトを参照してほしい。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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