GBA向けに開発されていた64MbitのRPG『Broken Circle』、12年越しでSteam向けに復活。当時のクオリティのまま発売へ
Piko Interactiveは『Broken Circle』をSteam Greenlightに登録した。『Broken Circle』は2004年にゲームボーイアドバンス(以下、GBA)向けに開発されていたRPG。
冒険の舞台となるミッドガルドでは、争いが絶えずモンスターも凶暴化し続けていた。そんな中、世界を滅ぼす災害ラグナロクを予兆する大きな地震が発生する。主人公はすべての元凶であるネクロマンサーを倒すか、地獄に生きるビーストハンターになるかを迫られることとなる。本作はターンごとにキャラクターが動く戦闘システムを採用しており、映像ではフィールド上でもモンスターを攻撃しているシーンが見られ、おそらくシンボルエンカウント形式になっているとみられる。生き生きとした2Dアニメーションや、特有のチップチューン音源などどこか懐かしい雰囲気を誇る『Broken Circle』であるが、なぜお蔵入りとなってしまい、そしてなぜ2016年になって再びリリースへ至ったのだろうか。
256Mbitから64Mbitへの圧縮
開発のはじまりは2004年にまでさかのぼる。開発者のひとりであるElvis Morelli氏は同年に、あるパブリッシャーから『Broken Circle』を開発する契約を勝ち取った。自身のアーティストとしての才能を遺憾なく発揮できるプロジェクトを計画し高揚していたMorelli氏だが、プログラミングスキルは全くなく、開発に7 Raven Studiosが加わることとなった。しかし、最初の障害がメンバーの前に立ちはだかる。それはGBAのロムカートリッジのコストだ。当時GBAでは256Mbitのロムカートリッジが主流であり、それを準拠として開発されていたが、資金の面で採用することを断念しなければならなかった。そこで7 Raven Studiosのプログラマーはなんとかゲームを64Mbitまで圧縮させた。しかし、ゲームを完成させた頃には当初のパブリッシャーとの関係が切れており、かつニンテンドーDSの台頭もありGBAのサイクルは終わりを迎えていた。さまざまな会社に販売の話を持ちかけるという努力も実らず、最終的には任天堂に認められていない会社としか契約ができずにリリースを断念、日の目を見ることはなかった。2009年には、7 Raven Studiosはこの無念を晴らすべく、インターネット上でロムデータを公開した(現在ではリンク切れとなっている)。
そして、開発から12年近く経過した2016年、『Broken Circle』がPC向けにリリースされることとなる。パブリッシャーのPiko Interactiveは“ゲーム業界の骨董屋”とも言える、一度開発中止に終わったタイトルなどを世の中に出すことを得意とする会社だ。Piko Interactiveは以前にもSFC向けに開発されており頓挫してしまったゲーム『Dorke and Ymp』を甦らせるプロジェクトを進めており、こちらは6月の発売が予定されている。今回のリリースはこういったPiko Interactiveの取り組みが関係しているのは間違いないだろう。
本作はGBA向けのエミュレーターで動作することも確認されており、グラフィックフィルターを選べるといったオプションは用意されているものの、原則としては当時のクオリティのままリリースされるようだ。Greenlightを通過した際にはコントローラーやトレーディングカードにも対応するのだという。コメント欄の一部では「デベロッパーが無料で公開していたゲームを、第三者が価格をつけて売るのか」といった厳しい声や「盗まれたロムのゲームなのではないか」といった今回の動きを疑問視する声はあるものの、PCでGBA向けのゲームがどのような動作をするのか、興味深いところではある。