『FFXV』体験版が国内外で3000円にてやり取り ビデオゲームの体験版が売買される時代

スクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジー零式 HD』が国内外でリリースされた。本作は、2011年にPSP向けにリリースされた『FF零式 HD』を、PS4向けにHDリマスターした作品だ。ナンバリング最新作『ファイナルファンタジー XV』の体験版「EPISODE DUSCAE」が初回限定特典として付属し、現在これがオークションサイトにて3000円前後でやり取りされている。

 


体験版を売買する時代

 

初回生産限定版や予約限定版などには、ビデオゲーム本編だけでなく様々な特典が収録される。この販売方法自体は珍しいものではないのだが、限定版に付属するデジタルコンテンツが、オークションサイトでやり取りされる事態が起きている。そのまま転売するだけでなく、ゲーム本編であるディスクやパッケージを除いた上で、コンテンツや限定衣装などのプロダクトコードのみを売買することも多々ある。

かつては無料で配信されることも多かった体験版、あるいはベータテストなどへ参加できるキーも例外ではない。国内や海外に限らず、人気作であれば数千円でやり取りされることもよく見られるようになってきている。やや事情は異なるが、2014年9月には、海外で任天堂が『スマッシュブラザーズ3DS』の体験版をプラチナ会員向けに限定で配信した。通常版には30回の起動制限があるのに対し、このバージョンは起動回数が無制限という代物だ。プラチナ会員1人につき4つの体験版が先行配信されたが、これがeBayなどで3000円前後にて取り引きされる事態となった。

今回の『FF零式 HD』では、初回限定特典にのみ「EPISODE DUSCAE」が収録されており、一般プレイヤー向けには別の「FINAL FANTASY XV 触れるテックデモ(仮)」が無料配信される予定である。Yahoo!オークションでは、前者の「EPISODE DUSCAE」が3000円前後の価格で取り引きされている。eBayでも同様の光景が広がっている。国内での『FF零式 HD』の価格は税抜きで6800円だ。海外で人気シリーズ最新作『Battlefield 4』のベータ参加権が『Medal of Honor』に同梱された時と同じ感情を、今回の『FFXV』体験版に持っている方が多いのだろう。オークションでゲーム本来の4割強かそれ以上に迫る体験版の価格帯が、その証拠といえる。

 

こういった体験版の売買は、スクウェア・エニックスや正規の小売店を介さないやり取りであり、一般の消費者が購入できないほど初回生産限定版が買い占められたり、オークション上での詐欺行為が蔓延する可能性もある。だが完全なる悪の行為とは断定しづらい。結局のところ、「高い値段がつけられ正規の購入方法でなくとも買う」のを決めるのは、個々のプレイヤーがだからである。むしろ今回の件では、かつての『グランツーリスモ』シリーズのプロローグ編や、『METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES』、あるいは開発中のゲームを購入する早期アクセスとあわせて見て、開発途中でもゲームを買いたいプレイヤーが多いことをあらためて認識させられる。「体験版ぐらい無料でだせよ」と愚痴りつつも、実際には買ってでも欲しい人は何人もいるのだ。

 

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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