ゲーム開発者による「開発過程を1分で振り返る動画」が流行の兆し。まっさらな空間から始まり「ゲーム」になるまでを、1分にギュッと濃縮

Xにて、インディーゲーム開発者が自分の作品の数年間の開発過程を1分で振り返る動画が流行し始めている。まっさらな空間から始まって、しっかりとゲームらしくなっていく様子が関心を集めているようだ。

Xにて、インディーゲーム開発者が自分の作品の数年間の開発過程を1分で振り返る動画が流行し始めている。開発者の継続的な努力により完成形へと近づいていく進歩の様子が、視覚的に分かりやすいことからか注目を集めているようだ。

今回の流行の発端になったとみられるのは、個人ゲーム開発者Brute Force氏のポスト。同氏が制作中のゲーム『Paper Sky』の開発進捗の様子を、「1 year of gamedev in 1 minute..(ゲーム開発の1年を1分以内で)」という文面とともに紹介した投稿だ。

『Paper Sky』は紙飛行機となり、オープンワールドのさまざまな風景を滑空するアドベンチャーゲームだ。紙を丸めて球体になることもでき、斜面を転がってそのまま紙飛行機に戻って滑空するなど、自由に移動する爽快感を楽しめる。

先述のポストでは、開発初期と思われる時点から1年後までの、同氏の試行錯誤と改良の変遷を1分ほどの動画で見ることができる。テストエリアのような何もない空間に、シンプルな紙飛行機を配置したところから動画はスタート。その後紙飛行機の滑空や球体への変化など、基本的な仕組みができたところで、同氏は見た目の改良に着手。リアルな陰影や紙飛行機の軌跡、飛行中に紙がはためく動きが追加され、球体の見た目も単なるボールから紙をくしゃっと丸めたようなグラフィックに変更。この時点でぐっとゲームらしい見た目になったことが確認できる。その後もさまざまなフィールドの追加や急降下、扇風機を使った移動などの新ギミック、衝突時に紙が折れ曲がる細かなディテールなど、ゲームが次第に洗練されていく様子が見てとれる。

まっさらな空間から始まって、しっかりとゲームらしくなっていく様子が関心を集めたのか、この投稿は本稿執筆時点で1300リポスト、1万5000いいねを記録。同氏はこの「マーケティング」により、1日に3800件を超えるSteamウィッシュリスト追加を達成したことを報告した。この成功報告もあってか、インディー開発者が「~year(s) of gamedev in 1 minute」としてゲーム開発の数年間を1分前後で振り返る動画を作成し、ポストする宣伝が流行し始めている。

ゲーム開発者Fer氏によるポストもその一つだ。こちらでは開発中のゲーム『Tossdown』の制作進捗が紹介されている。運が最悪だという配達員があらゆる危険を避けながら荷物を配達するというこのゲームでも、『Paper Sky』と同じくテストエリア風の空間でキャラクターが動き回るところから動画がスタート。フィールドや敵キャラクターの追加だけでなくUIにも随時手が加えられており、ゲームの質を高めようと模索する、開発者のこだわりが伝わる動画となっている。

国内の開発者もこの流れに反応。ゲーム開発者のWazen K氏は、なんと4年分の開発を36秒にまとめた動画を投稿した。動画は開発中の新作『マイトレイア』の開発進捗をまとめたものとなっている(関連記事)。2020年に始まったと思われる本作の開発では、初期はアクションにかなり力を入れて開発していた様子がうかがえる。同氏は『デビルメイクライ』シリーズに携わった経歴を持つ人物で、初期から高いクオリティのアクション性があったことを確認できる。その後はフィールドやUIも作成され、徐々にブラッシュアップ。主人公のレイアらしき人物の髪の毛が現在と異なる短髪のオレンジ色であったり、パワーゲージと思われる個所が「気合い」という表記になっていたりと、開発初期バージョンの仕様も知れる興味深い動画となっている。

通常、ゲームをプレイする側は完成形しか知ることができない。「1 year of gamedev in 1 minute」では、実際のゲーム開発の様子だけでなく、ゲーム開発者がどんなアイデアを基に開発を始め、どんな努力を重ねて現在の形になったかがうかがい知れるだろう。また手作業でじっくりと磨き上げられてきたことも見受けられ、そのゲームへのこだわりや労力が伝わることもあってか、効果的な宣伝方法として注目されているようだ。

X上で自作のゲームを紹介する流行はいくつか見られ、去年11月には「3秒トレイラー」(関連記事)、最近では「15秒トレイラー」でのゲーム紹介が流行した(関連記事)。いずれも短い時間でゲームプレイのハイライトを見せることで視聴者にインパクトを与え、宣伝効果をもたらしていた。SNSを活用し、アイデアあふれる作品紹介がおこなわれる点も、インディーゲームシーンの見どころと言えるかもしれない。

また今後も開発過程の1分動画に新たな動画が投じられることにも期待したい。現時点でも本稿で紹介した他にYahya Danboos氏が開発中の『キングダム ハーツ』風ローグライクARPG『ルミナス・ナイツ』など、多数の動画が「1 year of gamedev in 1 minute」としてXに投稿されている。ゲームが進化していく過程に興味のある方はぜひチェックしてみてほしい。

Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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