幻の大人気スマホゲーム『Flappy Bird』の新作が発表されるも、原作者は「無関係だし権利を売ってはいない」と表明。対する新作開発元は「法的な権利はある」と主張


Flappy Bird Foundationは9月12日、アクションゲーム『Flappy Bird』の新作を発表した。今年の秋にWebブラウザ版が、2025年にはiOS/Android版が配信予定。これを受けて、オリジナル版『Flappy Bird』の開発者Dong Nguyen氏が、新作には関与していないと声明を出し注目が集まっている。

オリジナル版『Flappy Bird』は、2013年にiOS向けに、2014年にはAndroid向けにもリリースされた横スクロール・アクションゲームだ。画面をタップして主人公の鳥を羽ばたかせ、ステージに配置された土管の隙間をくぐり抜けていくゲームプレイで、シンプルながら難易度が高く、中毒性のある楽しさがあると当時話題に。しかし、Android版のリリース直後である2014年2月に配信終了された。


オリジナル版『Flappy Bird』は、当時瞬く間にアプリストアのダウンロードランキングのトップに躍り出るほどの大人気となり、開発者のDong Nguyen氏はゲーム内広告などにより1日に5万ドル(約700万円・現在のレート)の収益を得ていたとされる。ただ、ゲームプレイの中毒性は意図したものではなく、これを懸念した同氏が自らの判断で配信終了させたとのこと。それから約10年が経ち、新作が突如として発表された格好だ。

今回発表された『Flappy Bird』の新作では、オリジナル版のゲームプレイを踏襲しつつ、新たなゲームモードやキャラクターなどが導入予定。公式サイトでは、100人のプレイヤーで競い合う「Flappy Bird Rivals」や、初心者向けとみられる「Flappy Bird EZ」などの新ゲームモード、および4体の新キャラクターのプロフィールが紹介されている。

ただ、この新作にはNguyen氏は関与していないという。同氏は9月15日、約7年ぶりとなるSNS投稿にて「“彼らのゲーム”には関わっていないし、何も売り渡してもいない」とコメントした。実は新作の公式サイトでは、「『Flappy Bird』の大ファンにより、作品の法的な権利を獲得し、正式な『Flappy Bird』作品としてふたたび孵化させる」と記載されている。


発表によると、Flappy Bird Foundationは商標「Flappy Bird」を、Gametech Holdingsから獲得したとのこと(Gematsu)。Gametech Holdingsは、2023年に米国にて「Flappy Bird」の商標を出願したのち、原作者であるDong Nguyen氏が登録していた同商標の取り消しを申し立てていた。Nguyen氏は長らく更新手続きをおこなっておらず、申し立てにも対応しなかったため、Gametech Holdingsが「Flappy Bird」の商標を手にすることになったようだ。

またFlappy Bird Foundationは、『Piou Piou vs. Cactus』の作品をおよびキャラクターの権利も取得しているとのこと。同作は『Flappy Bird』によく似たゲームで、オリジナル版『Flappy Bird』がリリースされた当時には、すでに存在した同作を模倣したのではとも囁かれた。すなわち同社の発表は、『Flappy Bird』の商標とデザインについて、自らが権利を持っていると主張する意図があるのだろう。


法的な権利の正当性はあるのかもしれないが、原作者の与り知らぬところで大ヒットゲームの新作開発が進められている状況が明らかになり、Flappy Bird Foundationに対しては批判的な意見も寄せられることに。その中には、ゲームデザインに対する指摘もみられる。

Google検索にて『Flappy Bird』新作の公式サイトをコマンド「site:」を使って調べると、通常アクセスできないページがいくつかヒット。そのひとつでは、ブロックチェーンプラットフォームSolanaに言及されている(現在は削除済み・Webアーカイブ)。詳細は不明だが、『Flappy Bird』新作は“世界初のオープンソースWeb2/Web3ゲーム”になるとし、クリエイターなどは本作を使って稼ぐことができると案内されている。なお本作の開発には、Web3関連企業1208 Productionsが関わっているようだ(varun.ch)。


Dong Nguyen氏は声明の中で「crypto(暗号通貨)をサポートしない」とも述べており、新作には上述したような背景があると知ったためとみられる。近年、ゲームにブロックチェーン技術が取り入れられる動きがみられる一方で、それに拒否反応を示すゲーマーは少なくない。『Flappy Bird』新作は、同技術の導入を隠して発表されたようにも見え、こちらにも批判的な意見が投げかけられている状況だ。また発表のSNS投稿には、こうした背景を説明するコミュニティノートが追加されている。

オリジナル版『Flappy Bird』は、大きな人気を獲得し、さまざまな面で話題となりながらも短期間で配信終了となり、ある種伝説的なゲームとして語り継がれている。そんななかで新作が突如発表され、驚きをもって迎えられたが、原作者の望むかたちでの復活とはなっていない様子。『Flappy Bird』新作は今後計画どおりにリリースされるのか、また作品がどのように受け止められるのか注目される。