『Firewatch』開発者、返金を求めるユーザーに対し複雑な想いを明かす。「私たちに返金を責めることはできない」

Steam/PlayStation 4向けに2月10日から販売されているアドベンチャーゲーム『Firewatch』。美しいフィールドと交錯する登場人物の想いがうまく融合されているとの声が多く、すでに各メディアでも高い評価を得ている。しかし、ゲーム内容そのものに不満は持っていないものの、価格とボリュームが見合わないと考える人々も一部ではいるようだ。Steam Communityではとあるユーザーが「返金申請しようか迷っている」とスレッドを立て、ほかのユーザーに相談をおこなっていた。

 

開発者の告白

このスレッドを立てたSteamユーザーUndercover Fish氏は、『Firewatch』をこよなく愛するファンであると公言し、2~3時間かけてゲームをクリアしたと語る。氏は開発者をサポートしたい気持ちもあるが、返金すれば18ドルが返ってくるという事実を見過ごせないと、揺れる心境を吐露している。(Steamの返金条件は購入後2週間以内かつプレイ時間が2時間以内と定められているが、それらを超えても適用されることがあるようだ)

そこに現れたのが『Firewatch』にアーティストとして携わっていたJane Ng氏だ。Jane氏は、通常ならばこういった返金を求めるユーザーに対して反応をしないことを前置きしながら、良心の呵責に苛まれながら返金を悩むUndercover Fish氏の姿勢に感銘を受けコミュニケーションをとることを決断したようだ。

Jane氏を含む開発者11名は、経済的なリスクなどさまざまなものを犠牲にして『Firewatch』の開発を始めたのだと語る。開発スタッフは『Firewatch』のポテンシャルに魅入られ、収入の良い職から、向こう見ずにゲームの開発に参加したのだという。スタッフは全員が小さなオフィスの中で缶詰め状態で、安物のオフィスチェアに座り、浴室を共有しながら開発に励んでいたようだ。開発期間にはスタッフそれぞれに物語があったようで、出会いや別れ、結婚や出産、愛する人を失う者も存在したのだという。しかし、インディーゲームの開発は一致団結がなければ始まらない。スタッフは苦楽を共にし、お互いに支えあいながら『Firewatch』の開発に取り組み続けたと語っている。

そういった意味では、開発の日々は充実していたと同時に地獄のようだったという。Jane氏は15年間ゲーム開発にかかわっているが、その中で最もハードなプロジェクトだったようで、とにかく自分の出せるすべてを注ぎ込んだと明かす。苦しみを味わった分、『Firewatch』の開発には誇りを持っており、もしゲームが失敗に終わったとしても、成し遂げたものには変わりはないという気持ちを抱いているようだ。それゆえに、産みの苦しみと喜びを知る者として、Jane氏は返金について半ば諦めとも見える姿勢で複雑な想いを明かしている。

“ゲームが金額に見合わないと考える人がいるのは残念。ゲームを好まない人々がいるのは当然だけど、ゲームをプレイした人から金額の価値がないと思われるのは、個人的には落ち込むわね。でも、18ドルの返金を求めるユーザーを非難することはできない。私たちはユーザーの経済事情もわからない。18ドルが大金かもしれないし、そうでないかもしれない。返金を望むことは公平。だから、私達は18ドルという金額を設定した。返金したとしても私達は怒らない。私達が望むのは、もしゲームが格安価格でセールされた時は、ほかのユーザーにもあなたが楽しんだゲーム体験を共有できるように、ぜひゲームをギフトしてほしい。”
Steam Community

Jane氏の告白はユーザーの共感を呼び、多くのエールが送られている。スレッドを立てたUndercover Fish氏も「開発スタッフに18ドルを捧げるに値する、私は今幸せだよ」と返金しないことを決断したようだ。

 

インディーデベロッパーの苦悩

インディーデベロッパーは限定された開発環境、資金という点から「短く濃いゲーム」を得意とするスタジオが多い。そういったゲームは時に値段とボリュームが比例していないという批判に晒されてしまう。特にアドベンチャーゲームは一度クリアすれば終わりというユーザーが多く、リプレイ性の欠如から割高を感じてしまうのかもしれない。『Firewatch』に似た『Gone Home』や『The Vanishing of Ethan Carter』なども例外ではない。20ドル近い値段で販売され、おおむね良い評価を受けているものの、発売直後のレビューでは「面白いが価格に見合わない」という意見が見受けられる。ゲーム体験のどの部分に価値を置くかはユーザーによってさまざまであるが、プレイ時間という数字は可視的なものであり、評価の基準にする人が多いのは理解できる。「短く濃いゲーム」を得意とするデベロッパーと「ボリューム」の闘いはまだまだ終わりそうにない。

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