『ファイナルファンタジー XV』ディレクターが語るナラティブとゲームプレイの融合、「ラスアスがいい例」
スクウェア・エニックスが誇るRPGシリーズのナンバリング最新作『ファイナルファンタジー XV』。今年の発売を予定に着々と開発が進められる中、本作のディレクターを務める田畑端氏が、物語を伝えるナラティブ部分とプレイヤーが操作するゲームプレイ部分の融合がいかに重要であるかを、海外メディアExaminerのインタビューで語っている。ストーリーがゲームプレイを通して自発的に進行していくお手本として、ソニー・コンピュータエンタテインメントから2013年に発売されたサバイバルアクション『The Last of Us』を挙げ、その演出技法をRPGジャンルに応用する上で生じる挑戦を振り返った。誰もが経験し得る親子の絆を描いた愛の物語に迫る。
父と子の愛がテーマ
「ゲームプレイを通じてストーリーがいかに無理のない形で進行していくかが大事なんです。『The Last of Us』に用いられていた技法がいい例でしょう」。田畑氏は、本作を形作る上で意識したゲームデザインの中枢をこう振り返る。絶大な人気を博したサバイバルアクションの演出に大いに影響を受けたというが、同様の技法をRPGジャンルへ応用することこそが新たなる挑戦だという。「異なる点は『ファイナルファンタジー XV』が完全なRPGだということです。つまり、より幅広いアングルからキャラクターを形成するための、もっとディープでヘヴィーで完全なストーリーが必要なのです」。
寄生菌のパンデミックで荒廃した世界を舞台にしたサバイバルアクション『The Last of Us』は、20年前愛する娘を失った主人公ジョエルが10代の少女エリーと旅を続ける中で親子愛を取り戻していく心情の変化を描いている。対して、『ファイナルファンタジー XV』は、ルシス王国王子ノクティスの成長と、男手一つで彼を育てた父レギス国王との親子愛を描いている。主人公の立場や主要キャラクターの性別は違えど、父と子の愛をテーマにしているという点で共通点は多い。「『ファイナルファンタジー XV』のストーリーで最も重要な部分の一つは、次期国王を担う若き王子ノクティスがいかに歩んでいくのかという話です。この物語が大部分を占めています」。
田畑氏によると、ノクティスは物語を通して、次期国王としてだけではなく、一人の人間としても大きく成長していくのだという。「プレイヤーはそうした彼の感情的な旅路をともに経験していくんです」。同氏が例に『The Last of Us』を挙げた、自発的に進行するナラティブの真髄とは、まさにここにあるのかもしれない。愛娘を失い凍てつく心でただ生き延びることだけに固執するようになったジョエルにプレイヤーは感情移入し、サバイバルというゲームプレイを体験していく中で、エリーと過ごす時間が彼に与える心情の変化を自らも味うことになる。その変遷は決して脚本に用意された単なる起承転結の一部ではなく、プレイヤーと主人公が二人三脚で味わった穏やかな成長ではないだろうか。
さらに、ノクティスの情事について尋ねられた際も、田畑氏は『ファイナルファンタジー XV』の登場人物が経験する愛情や絆は、単なる恋愛感情に留まらないことを強調している。「一番は父と息子の絆です」。その繋がりを象徴するキーアイテムの一つがノクティスたちの搭乗する車なのだという。「ノクティスと仲間たちが乗り回している車は実は父から授与された記念品なのです」「次に大きく描いている関係は友情。そして3番目に恋愛感情です。ラブストーリーにはなりません。ゲームのメインテーマではありませんが、ノクティスの人としての成長を広く語る上ではロマンス要素も含まれています」。ファイナルファンタジーはシリーズを通して愛のテーマを貫き通しているが、父と子の絆がふんだんに散りばめられた本作はこれまでとは一味違った硬派な愛が描かれそうだ。
ゲームプレイとストーリーの語りを一つに融合するのが狙いだと田畑氏が語る『ファイナルファンタジー XV』の焦点は親子愛。『The Last of Us』で描かれた親子愛を超える人間の絆とは、プレイヤーの分身である主人公の立場が違うものの、親子という万人が有する人間関係をテーマにすることで、ゲームプレイを通して自発的に進行していくキャラクターの心情変化と成長を、無意識のうちに共有させてくれるのかもしれない。歴代ファイナルファンタジーをプレイしてきたユーザーは父親として、これからの作品をプレイするユーザーは子供として、世代を越えて分かち合えるメッセージを用意しているに違いない。