デンマーク生まれの「すこし、不思議」なインディーズ作品『Figment』は、潜在意識のなかで悪夢やトラウマと戦うAVG


3月18日に幕を閉じた世界最大のゲーム開発者会議「Game Developers Conference 2016」(GDC 2016)。各種メディアがすでに報じているとおり、今年はOculus VRの「Rift」をはじめ、Sony Computer Entertainmentの「PlayStation VR」などVR絡みのセッションが目立っていた。とはいえ、会場で目にするのは何も注目の最新技術関連だけではない。優れたインディーズゲームにも出会える場だ。

デンマークの小規模開発スタジオBedtime Digital Gamesの3作目となるアドベンチャーゲーム『Figment』は、GDC会場でお披露目されたそんなタイトルの1つである。まだ開発初期段階のため公式サイトでも詳しいゲーム内容はされていないのだが、一見明るく華やかな色使いのコンセプトアートを眺めていると、どこか言いようのない不安・不安定さを覚えることだろう。

『Figment』の世界がベースとしているのはシュールレアリズム。画家のマックス・エルンスト(Max Ernst)やサルバドール・ダリ(Salvador Dali)に代表される、夢や潜在意識、人間の抱える不安や恐怖を描く非現実的世界……と言葉にするとわかりづらいかもしれないが、誰もが一度は美術の教科書で目にしたダリの”ぐにゃりと溶けたような時計の絵”と言えば、思い出すに違いない。

 

 

プレイヤーは「Dusy」という名の不思議な、しかし勇気あるネズミのような耳を持つキャラクターを操作する。人間の潜在意識の中で恐怖や悪夢、トラウマ(を象徴する敵)と戦ってこれを退け、意識世界を救うというのが主なゲーム目的となっているようだ。Dustyが冒険するのは色鮮やかな「creativity(創造性) 」、溶けかけた時計に覆われた「logic(ロジック)」、書物と汚れた食器が積み重なる「mountain of stress(ストレス)」という3つの異なる世界で、それぞれが人間のもつ意識そのものを表現している。

 

 

冒頭でお伝えしたとおり『Figment』は同社にとって3作目となるタイトルである。2014年5月にSteamで配信開始した第1作『Chronology』は、過去と未来を操ることで「現在」を修復していくパズルベースのAVG。前作『Back to Bed』は、『Figment』同様にコンセプトはシュールレアリズム。夢遊病者であるBobの潜在意識の中に入り、彼の守護者たるSubobを操作し危険から守り安全なベッドまで導くという内容だ。特に『Back to Bed』は”Dutch Game Awards2012″、”Best Console Game Nomination”など優れたインディーズゲームに与えられる賞を受けており、Steam上での評価は「非常に好評」。Android/iOS版も配信しており、すでに一定の評価を得ている。時間と空間、夢や潜在意識といった抽象的なキーワードをゲームという枠に落とし込むのは、Bedtime Digital Gamesの十八番のようだ。

リードゲームデザイナーのJonas Byrresen氏はKILL SCREENの取材に対して、「我々が作りたかったのは、プレイヤーがゲームをクリアし終わってなお、まだこの『Figment』の中にいるように感じる。そういう作品だ」と答えている。同じシュールレアリズムをベースとした作品としては第2弾となる『Figment』は、前作より洗練された仕上がりを期待できるだろう。他にあまり類を見ない独創的なコンセプトゆえに、今後の続報に注目したい。