『Fallout 4』のコンパニオン「Preston」がネットのアイドルに、“膝に矢を受けた衛兵”ブームの再来か
Bethesda SoftworksのアクションRPG『Fallout 4』に登場するコンパニオンキャラクターの一人「Preston Garvey(プレストン・ガービー)」が、鬱陶しくも愛すべきキャラとしてファンの間で特別な脚光を浴びている。昨年11月の発売以降、海外のSNSを中心に「Preston Garvey」の顔写真や台詞を用いたコラージュ画像やカートゥーン作品が次々と投稿された。2011年に同社から発売されたRPGシリーズ『The Elder Scrolls V: Skyrim』で人気があつまった“膝に矢を受けた衛兵”ブームの再来にも似た珍現象を、業界メディアKotakuがいち早く報じている。
我々の助けを必要としている
「Preston Garvey」は、『Fallout 4』のストーリー序盤に登場するコンパニオンキャラクターの一人。4つの主要ファクションの一角「Commonwealth Minutemen」のリーダーで、メインクエストの最序盤から登場するため、彼を知らないプレイヤーはいないだろう。「Minutemen」は、2180年に「Diamond City」がスーパーミュータントに襲われた際、勇敢に立ち向かい撃退した過去を持つ「Commonwealth」のピースキーパーだ。その後、傭兵集団「Gunners」が「Quincy」の町を襲撃した虐殺事件“Quincy Massacre”でメンバーの大半が死亡、もしくは行方不明となったが、「Preston」を含めた20人が生き残った。そんな彼が目指すのは、誇り高き「Minutemen」の再興と、荒廃した世界でレイダーやスーパーミュータントに脅かされる人々の生活に平和をもたらすこと。ゲーム中、主人公が話しかけるたびに終わりが見えない人助けクエストを延々と押し付けてくる。
「Minutemen」の人助けクエストは、「Preston」がマップに示した集落に振りかかる脅威を排除しにいくというもので、その対象は世紀末の無法者レイダーであったり、グールやスーパーミュータントといった人を超えた存在であったりとさまざま。それらのサブクエストをクリアし、一つの村に平穏を取り戻したと思った束の間、「また別の集落が我々の助けを必要としている」や「マップに印を付けておいた」という台詞とともに新たなおつかいが強制的に追加される。クリアしてもクリアしてもきりがない救援要請と彼を象徴するこれらの台詞は、たちまちプレイヤーたちの注目を集め、愛すべきウザキャラ「Preston」として彼をリスペクトするコラージュ画像やカートゥーン作品が次々と生み出された。映画のシリアスなワンシーンをぶち壊す演出や、ニュース番組で放送されたインタビューシーンの合成、主人公「Nate」とのユーモラスな会話、Twitterに突如現れた「Preston Garvey」ボットなど、正義感に満ちた彼のとぼけた顔を見ているとどこか嫌いになれない親近感が湧いてくるようだ。
I’ve found a settlement that needs our help, I’ve marked the location on this map #OregonUnderAttack #fallout4 pic.twitter.com/h1CevlhUOE — Preston Garvey (@ColonelGarvey) January 4, 2016
膝に矢を受けてしまってな
Bethesda Softworksのタイトルでは、過去にも『The Elder Scrolls V: Skyrim』に登場した衛兵の“I used to be an adventurer like you, but then I took an arrow to the knee”(昔はお前のような冒険者だったが、膝に矢を受けてしまってな)という台詞が注目を集め、一部を改変したさまざまなフレーズがネットの海を飛び交った。この時は、ゲーム内の各地に登場する異なるNPCが同じ台詞を口にするという奇妙な光景がファンの目に留まり、ブームに火が点いた。まるで取り憑かれたかのようにファンがテンプレートの改変をフォーラムやSNSに投稿し続ける異様さは、ブームにウンザリした気持ちをSkyrim流で表現する動画が登場するほど。また、実際にタトゥーで膝に矢を受けたファンまで現れた。
無名のNPCと何気ないこの台詞。どうしてここまで世界に名を轟かせてしまったのだろうか。開発者によると、このフレーズをゲームに収録したのはプロジェクトの後半だったとのことで、もちろんこれほどの注目を集めるとは微塵も想像していなかったという。後に、開発元Bethesda Game Studiosでゲームディレクターを務めるTodd Howard氏は、Kotakuの取材で次のように語っている。「もちろんウケ狙いでわざとやったわけじゃないよ。みんなが気に入ってた台詞だったんだ」「そんなに頻繁に聞かないと思うけどな。印象的ではあるね。味がある。だから心に残るんだろうね。素晴らしいフレーズだよ」。
Howard氏によると、世界的に有名となったこのNPCの台詞は、当時ゲームデザイナーとして『The Elder Scrolls V: Skyrim』の開発に携わっていたEmil Pagliarulo氏が書いたものだという。「プロジェクト後半のことだったかな。衛兵にもっと個性を持たせたかったんだ。いつもブツブツ文句を垂れていたり、プレイヤーにあれしろこれしろ言うだけだったからね。そこでEmilに頼んでプレイヤーを反映したコンテンツを加えることにしたんだ。結果、ガードたちはプレイヤー自身やプレイヤーの行動について言及するようになった」。存在感の薄かったNPCの衛兵にプレイヤーに関する台詞や自分の身の上話をさせることで、人間味を持たせることが目的だったようだ。話題になったフレーズもその一つに過ぎなかったのだと、Howard氏は語る。Skyrimの衛兵は、膝に矢を受けたおかげで自らも冒険者だったというかけがえのない過去を得たのだった。