Epic Gamesは、同社が開発したゲームエンジン「Unreal Engine 4」を無料化すると発表した。2014年3月のGDCにて、月額19ドルのサブスクリプションモデル導入を発表してから1年。「Unreal Engine 4」は、誰でも無料で入手することが可能となり、制限なく使用できるようになった。
プロやインディー、学生を問わず無料
Epic Gamesの発表によると、無料で提供されるのはデモ版やトライアル版などではなく、現在まで月額19ドルにて提供されてきた製品版のすべての機能が利用可能となる。一方、「Unreal Engine 4」を使用したゲームを販売し、四半期(3か月間)で3000ドル以上の売上を生みだした場合、開発者は5パーセントのロイヤリティを支払う必要がある。ロイヤリティの発生と、マーケットプレイスにて販売されている有料コンテンツを除けば、今後は誰もが無料で「Unreal Engine 4」の全ツール、全機能、プラットフォーム対応、ソースコードなどが使用可能だ。プロジェクト製作の制限もなく、サンプルコンテンツや定期アップデートおよびバグ修正といったサポートも無料で継続して受けることができる。
Epic Gamesは、かつて「Unreal Engine 3」をベースにした開発環境「Unreal Development Kit」を無料で提供したことがあるが、これは非商用あるいはアカデミック向けに限った場合のものだ。「Unreal Engine 4」もアカデミック向けに無償で提供されていたが、プロやインディー、学生など対象を問わず、誰もが同じ「Unreal Engine 4」を無料で使用できるようになった。
Epic Gamesは今回の発表にて、「サブスクリプション開始後の一年間は予想を遥かに超えて素晴らしいものでした。そして今、もっと多くのユーザーにUE4を試していただくためには、障害は取り除かれるべきだとの結論に至りました」とコメントしている。無料化で利用者を増加させコミュニティを構築し、一部のユーザーからロイヤリティなどで利益を得る手法は、昨今ビデオゲームで採用されているFree-to-Playに近いビジネスモデルであると言える。
ゲームエンジン市場の覇権争いが加熱
今回のEpic Gamesの発表は、ゲームエンジン競合企業へ大きな衝撃を与えたと見ていいだろう。モバイルプラットフォームからPCゲームまで、幅広い層に支持されているゲームエンジン「Unity」には、無料版と有料のPro版が存在する。無料版でもゲーム開発は十分に可能であり商用利用もできるが、Pro版で使用できる機能が一部制限されている。Pro版の価格は16万2000円で、iOSやAndroidなどのPro用アドオンは別途購入しなければならない。
昨年サブスクリプションプログラムを発表し、「Unreal Engine」への対抗姿勢を見せた「Cry Engine」は、現在も月額9.90ドルの支払いプランが存在する。Steamでも展開するなど、独自の動きを見せている。しかし、昨年6月には、同エンジンを手がけるドイツのゲーム開発会社Crytekが財政難であることが、欧州圏のメディアを中心に報じられた。そして、同年7月に自社IP『Homefront』を売却し開発スタジオを統合している。
なお、現在のゲームエンジン市場では、Electronic ArtsとDICEの「Frostbite」を筆頭に自社製のものを有しているゲームデベロッパーが数多く存在している。また今回のGDC 2015にあわせて、海外では3Dソフトウェア大手のオートデスクがゲームエンジンビジネスへの参入を発表しており、3Dゲームエンジン「Stingray」を公式サイトにて紹介している。Epic Gamesの今回の無料に各社がどう対応するのか、ゲームエンジン市場の今後の動向に注目が集まる。