江戸時代の東京をVR観光できる『Edo VR』Kickstarterキャンペーン開始。ストレッチゴールには忍者ゲームの実装も

株式会社アバトラは11月16日、『Edo VR』の開発資金を募るKickstarterキャンペーンを開始した。本作は今年5月に『江戸の町VR化プロジェクト』として、国内クラウドファンディングサイトCAMPFIREでも開発資金を募っていた。

株式会社アバトラは11月16日、『Edo VR』の開発資金を募るKickstarterキャンペーンを開始した。本作は今年5月に『江戸の町VR化プロジェクト』として、国内クラウドファンディングサイトCAMPFIREでも開発資金を募っていた

本作は「江戸時代の東京にVRでタイムスリップ!」をテーマに、当時の江戸の町をオープンワールドの3D空間に再現してVRで体験できるというものだ。「熈代勝覧」など江戸時代当時を描いた絵画や、城や屋敷の設計図、写真などの文献をもとに時代考証をおこないデータを集積して、江戸の町並みの忠実な再現を目指すとしている。その監修は歴史研究家/3DCGアーティストの中村宣夫氏がおこなう。

今回Kickstarterキャンペーンを実施するにいたった経緯について同社は、CAMPFIREキャンペーンを実施した時の海外からの反響が大きかったため、海外で一番有名なクラウドファンディングサイトであるKickstarterでも開発資金を募ることにしたという。

CAMPFIREキャンペーン時の本作の紹介動画

『Edo VR』のKickstarterキャンペーンの目標金額は10万ドル(約1090万円)に設定されている。そしてそれを超えて集まった金額に対してはストレッチゴールが設定されており、再現する地域を段階的に拡大していく計画だ。まず初期目標である10万ドルが集まった場合には日本橋界隈が再現される。この場所は江戸経済の中心地で、町人の暮らしを覗くことができるという。

そしてストレッチゴールの第一段階である20万ドルを達成した場合、丸の内界隈を再現する。こちらは大名屋敷が建ち並ぶエリアで、武士の町という江戸の一面を見ることができる。

次のストレッチゴールは30万ドルに設定されており、これを達成すると浅草周辺を再現することになる。この地域では蔵前の商人たちの様子や、歓楽街として発展した吉原を含む地域を体験することができる。

そして出資金額が50万ドルに達した場合には、江戸の中心である江戸城が再現される。江戸城は天守閣はもちろん、御殿や櫓(やぐら)、門など多くの建物で構成される巨大な城だ。同社はこの江戸城を再現してこそ、今回のプロジェクトは完成するとしている。

そして最後のストレッチゴールは金額が大きく跳ね上がって100万ドルに設定されている。これを達成した場合、なんと忍者になってプレイできるVRステルスゲームを本作に実装するという。これはCAMPFIREキャンペーンの時には含まれていなかった開発目標だが、同社代表の大石真教氏らがFacebook上で、本作を使ったオープンワールド忍者ゲームを遊んでみたいかどうかアンケートをおこなっていたことがある。投票数はそれほど多くないものの回答はYESが圧倒的に多かったため、今回このようなかたちで目標の一つに据えたのかもしれない。なおVRゲームではあるが、一人称視点になるか三人称視点になるかは現時点では確定していないようだ。そのゲーム内容についてもコンセプトアートがいくつか示されているだけで、ステルスゲームという以外に特に説明はない。

本Kickstarterキャンペーンでは出資金額に応じてさまざまなリワードが用意されており、たとえば149ドル以上出資した場合、出資者の名前を看板に入れて町に配置することができる。また本作は町の外観だけでなく、建物の内部も再現する予定だ。しかし、その中には誰もが立ち入れるわけではなく、本キャンペーンへの出資金額による。たとえば吉原遊郭の建物に入るためには499ドル以上の出資が必要で、江戸城内にも入るとなると799ドル以上の出資をして、それぞれのアクセス権を得る必要がある。

江戸の町を忠実に再現するというコンセプトでありながら出資者の名前を配置するというのは、アルファベットやその他の文字が町にあふれる様子を想像するといささか疑問符がつくが、この辺はより多くの出資金を集めるために割り切っているのかもしれない。

出資金額次第ではこのような建物内の様子を見ることができるという
出資金額次第ではこのような建物内の様子を見ることができるという

本作と似たような試みとして、株式会社日の丸リムジンが凸版印刷株式会社と協力して、タクシーに乗りながら特定の場所の江戸の風景をタブレット越しに覗くことができる「タイムスリップタクシー」の提供を始めている。こちらは東京を訪れた観光客向けのサービスだが、『Edo VR』はVR環境さえあれば世界中のどこにいても体験できるという強みがある。しかし本作が完成した後のビジネス展開として、さまざまな可能性を感じさせるひとつのヒントであるように思う。

ゲーマー視点としては最終ストレッチゴールの忍者ゲームも気になるところだ。大規模かつ精巧に再現された江戸の町を縦横無尽に駆け回ることができるとなれば、想像するだけでも期待が膨らむ。しかし目標金額が非常に高額なため、現在の出資状況を見ると実現の可能性については難しそうだと言わざるをえないところがもどかしい。

開発中のデモ動画

『Edo VR』は3ds MAXとUnreal Engine 4を使用してOculus Rift・HTC Vive・PlayStation VR向けに開発する予定で、開発パートナーの募集もおこなっている。そして本Kickstarterキャンペーンが成功した場合、2017年6月のリリースを予定している。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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