オークションサイトeBayにて、Atari 2600向けゲーム『E.T.』の競売が開始された。米国ニューメキシコ州アラモゴルド市の市議会が出品したもので、その数はおよそ100本にのぼる。いずれもアラモゴルド市内の都市伝説「ビデオゲームの墓場」から発掘されたカートリッジだ。現在も入札受付中だが、価格は日本円にして5000円から数万円まで。高値のものには6万円以上の値がついている。
「ビデオゲームの墓場」は、アラモゴルド市内の埋立地に、1982年発売のゲーム『E.T. The Extra-Terrestrial』が埋葬されたという都市伝説だ。埋立地は市の管理下にあり、そこから出土したカートリッジも市の所有物となっている。市議会が出品しているのはそのためだ。タイトルのとおり、『E.T.』はスティーブン・スピルバーグ監督の同名映画とのタイアップ作品である。当時ゲーム業界のトップを走っていたアタリ社が、同作のカートリッジを過剰生産し、売れ残ったものを埋立地に廃棄したとの噂が現代まで語りつがれてきた。この『E.T.』が「アタリショック」と呼ばれる現象や、その後のアタリ社凋落の引き金になったとの説も存在する。また当時の批評家からも低評価を浴びた同作は、現在でも米国内における史上最悪のゲームといわれている。
都市伝説が事実となったのは、今年4月である。Microsoftは、Xbox向けドキュメンタリーシリーズ第1弾のテーマとして、都市伝説「ビデオゲームの墓場」を抜擢した。そして実際に掘りかえしてみると、伝説の通り大量の『E.T.』カートリッジが埋葬されていたのである。正確には『E.T.』だけでなく、複数のAtari向けゲームが出土したという。1300本以上のAtari向けカートリッジが、30年以上ものあいだアラモゴルド市内の埋立地で眠っていたのだ。
アラモゴルド市議会は、出土した1300本のうち800本をID付きでオークションに出品することを予告している。今年のクリスマスまでに700本ほどのAtariカートリッジがさらに登場する見込みだ。100本は前述のドキュメンタリー「Atari: Game Over」の製作陣に提供される。アラモゴルド市内の"宇宙博物館"や、世界中の美術館およびゲームミュージアムに展示することも決定されている。
なお「ビデオゲームの墓場」には、まだカートリッジが眠っていると推測されている。当初、深さ18フィートを想定していた発掘作業は、最終的に30フィートにまで到達し、すべてのカートリッジを回収することは困難であるとの判断が下された。今後「ビデオゲームの墓場」は、都市伝説ではなく、実在する1980年代ビデオゲームカルチャーのランドーマークとして語りつがれるだろう。