Devolver Digitalは10月1日、インディーゲーム販売をおこなう新レーベルBig Fanを設立したと発表した。Big Fanでは、映画やテレビドラマ、漫画などに原作がある、いわゆる版権モノのゲームを取り扱うことに特化するという。
Devolver Digitalは、『Serious Sam』シリーズや『Enter the Gungeon』『Inscryption』『Loop Hero』『Death’s Door』『Cult of the Lamb』など、多数の人気インディーゲームの販売を手がけるパブリッシャーだ。その完全子会社となるBig Fanは、「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」「DUNE/デューン」「ジョン・ウィック」などのゲーム化作品に携わった経験をもつベテランによって運営されるとのこと。同じく子会社のパブリッシャーGood Shepherd Entertainmentのスタッフが参加しているそうだ。
今回の発表にてBig Fanは、ライセンスゲーム(版権モノのゲーム)の領域においては新たなアプローチを取れる余地があるとコメント。開発を担当するインディー開発者自身が、いくつかのリスクを承知でユニークなアイデアを探求するための決断を下せることが重要であるとし、知見とリソースを提供しサポートすることが同社の役割とのこと。Devolver Digitalとも密に連携して取り組んでいくそうだ。
また、たとえば原作映画が公開されるタイミングにあわせた、マーケティングの側面が強いタイアップ企画としてのゲームではなく、独自の魅力がある独創的なゲームを提供することが目標であるとした。現時点で公表されているパートナーとしては、ディズニーや米放送局HBO、アメコミ出版社Dark Horse Comics、そして『Sniper Elite』シリーズなどの開発元であり映像・コミック製作も手がけるRebellionが挙げられている。具体的にどのIPをゲーム化するのか詳細はまだ明かされていないが、RebellionについてのみSFコミック「2000 AD」の世界観をもとにしたゲームになると発表されている。
Big Fanのビジネス開発部門トップを務めるAmanda Kruse氏は海外メディアGamesIndustry.bizの取材に対し、ゲーム化する原作については、現在新作、および続編が製作中の作品ではないことが望ましいとの考えを示している。そうしたIPには、開発における柔軟性があるためとのこと。Big Fanは現在スペイン・バルセロナに所在するインディースタジオと提携し、あるIPのゲーム化について契約締結間近にあるそうで、そのIPも今後公開される映画やドラマはないという。同スタジオが、ファンだとするIPのゲーム化の方法をDevolver Digitalに相談したことがきっかけとのこと。Kruse氏は、タイアップは否定しないものの、そうした開発者のIPへの情熱をもとにした取り組みが理想的だと述べている。
なお今回の発表にあわせて、既存の作品がDevolver DigitalなどからBig Fanに取り扱いが移管されている。カード選択式アドベンチャーゲーム『Reigns』シリーズとドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」とのコラボである『Reigns: Game of Thrones』、アメコミ「ヘルボーイ」のローグライク格闘アクションゲーム『Hellboy Web of Wyrd』、映画「ジョン・ウィック」をもとにした戦略ゲーム『John Wick Hex』の3作品だ。
近年Devolver Digitalは、インディーゲーム販売を手がける一方で、『Serious Sam』シリーズを手がけるCroteamや、『Reigns』シリーズのNerial、『Enter the Gungeon』のDodge Roll、『ASTRONEER』のSystem Era Softworksなどのスタジオを買収し、直接ゲーム開発に乗り出した。そうしたなかで、今度はインディーゲーム販売をおこなう新レーベルとしてBig Fanを発足させたかたち。複数のレーベルを抱えるパブリッシャーはいくつか存在するが、版権モノのゲームに特化するというのは珍しい。発表にてBig Fanは、リブートを夢見ていた作品や、ゲーム化を期待するカルトクラシックな映画・コミックがあるなら、要望を寄せてほしいと呼びかけている。