ドイツのゲーム企業Crytekは、最新ゲームエンジン「CryEngine V」をゲーム開発者向けカンファレンス「GDC 2016」にて正式発表した。本日より公式サイトにてダウンロード購入可能。ビジネスモデルは従来のサブスクリプションモデルから、ゲームのバンドル販売などで見られる”Pay What You Want”形式へ移行している。
Pay What You Want形式とは、ユーザーがコンテンツを購入する際に自由な価格を設定できる販売モデルのことだ。現在「CryEngine V」の最低支払額は”0ドル”に設定されており、また公式サイトの解説やプレスリリースを見る限りでは、支払額による機能制限などは存在していない模様だ。デベロッパーはゲームエンジンのすべての機能およびソースコードにアクセスすることが可能で、ロイヤリティや追加サービスの支払いなどは存在しないという。また支払った額のうち、最大で70パーセントをインディー開発の支援ファンド「Indie Development Fund」へと回すことができる。
なおCrytekは「CryEngine 3」のあと、第4世代として「CryEngine」をリリースしてきたが、第5世代の「CryEngine V」では見ての通りナンバリングが復活している。
「Cry Engine GDC 2016 ショーケース」
大胆なビジネスモデル、VR特化も注目
Unreal Engine 4やUnityなど、昨年からゲームエンジンには無料化の波が押し寄せており、その流れにCryEngineもようやく乗ったという印象だ。他社のゲームエンジンとは異なり、「CryEngine V」にはロイヤリティもアップグレードも存在せず、価格はユーザーにお任せしますというのはかなり大胆なアプローチといえるだろう。ただ「CryEngine V」の発表と共に、公式サイトでは有料カスタマーサポート「Insider Memberships」の存在も明らかにされている。
ゲームエンジン自体としてはC#でのスクリプティングやDirectX 12をサポートするほか、ヘッドセットの販売開始でVR元年と賑わうVRゲームの開発にも特化していることが明らかにされている。「Vive」「PlayStation VR」「Oculus Rift」「OS VR」に対応。Crytek自身、「Back toDinosaur Island」など複数のVRデモを勢力的にリリースし、またVRゲーム『Robinson: The Journey』を開発中など、VR分野には熱を入れているデベロッパーでもある。
なお今年2月に、AmazonはCrytekと契約を結び「CryEngine」をベースにした無料ゲームエンジン「Lumberyard」を発表したばかり。今回の発表もふくめると、AmazonのさまざまなWebサービスと連動する「Lumberyard」、そして従来のCryEngineにVR特化を盛り込んだ「CryEngine V」という役割分担を感じるところだ。