中国を拠点に活動するクラッカー集団Warezグループ(通称、3DM)は、今後少なくとも1年間はシングルプレイヤーゲームの違法コピーに着手しないことを表明した。グループの代表者は、海賊版の不在が正規品の売上にどう影響するのかを観察するためであると、フォーラムの中で説明している。先日には、近年導入され始めたコピー防止技術「Denuvo Anti-Tamper」に苦戦するクラッカーたちの嘆声が報じられたばかり。デジタルの裏社会を跋扈する悪名高い海賊団も、ついに白旗を挙げたのか。春節休暇に入ったクラッカー集団の現状を、著作権に関する情報を扱う海外メディアTorrentFreakが報じている。
割れないDenuvoにとうとう白旗か
3DMは、中国を拠点に世界中で活動するクラッカー集団。これまで『FIFA』シリーズや『Dragon Age: Inquisition』など、改ざん防止技術「Denuvo Anti-Tamper」の鉄壁により難攻不落とされた複数のタイトルの違法コピーに成功している。しかし、その都度改良を重ねるDenuvo Software Solutions GmbH(以下、Denuvo)のコピーガードに苦戦を強いられており、昨年11月に発売された『Just Cause 3』をクラックできないことへの鬱憤や将来への不安が、先月はじめにフォーラムを通して伝えられていた。なお、『Just Cause 3』に張り巡らされたコピーガードは現在も破られていない。
そんな中、グループの代表を務めるフォーラム創設者、通称“Bird Sister”(またの名を“Phoenix”)は、旧正月である春節(2月8日)を期に、当面の海賊行為を一部休止することを表明した。「ちょうど内部ミーティングを終えたところです。春節休暇の開始をもって、3DMはシングルプレイヤーゲームをこれ以上クラックしません。海外のWarezグループによるクラック状況は引き続きフォーラムに提示されるでしょうし、それらに関しては我々もアクティブに対応していくつもりです」と、フォーラムに書き込んでいる。いったい何を“アクティブに対応”するのかは定かではない。
また、当面の活動を休止する理由として、「1年後に正規品の売上が増加しているかどうか確かめたいと思います」と説明している。以前、『Just Cause 3』のクラック状況を報告した際、「それでもこのゲームは割れると信じています。だけど近年のエンクリプション技術における発展の流れを見ていると、2年後には世界から無料のゲームがなくなるんじゃないかって不安になります」と、強気とも取れる発言を残していたことから、突然の休止宣言はDenuvoへの白旗とも受け取れるが、声明の中で「Denuvo Anti-Tamper」に関しては一切触れられていない。
2014年にDenuvoの代表者が、「PCゲームのほとんどが遅くてもリリース日にはクラックされ海賊版が出回っていたことを考えれば、数週間でも数か月でも100パーセント海賊版のない状態を維持できるなんて、ゲーム業界史上前代未聞といってもいいでしょう」と語っていた“前代未聞”は、事実上3DMが『Just Cause 3』のクラックを諦めた今、すでに当たり前になったといえる。海賊版の供給が絶たれた世界が果たして正規品のセールスに著しい影響を及ぼすかどうかは定かではないが、『Just Cause 3』を販売するスクウェア・エニックスは、すでにモバイル事業およびPCゲームが収益の成長へ大いにつながったことを、2015年4月から12月までの収支報告で明らかにしている。そこには海賊版の存在感は微塵もない。