カプコンは開発職の約半数が「アニメーター関連職」と明かされる。モーションキャプチャーとの掛け算で“ぱっと見てリッチさ”わかる製品開発へ
カプコンのゲーム開発者は、約半数がアニメーターなど、キャラクター等の動きや演出に関わる職種で構成されており、その分野の人材確保を強化しているという。

カプコンは5月13日、2025年3月期の決算発表・説明会を行った。それに際して投資家向けの質疑応答も行われ、公式サイトにて概要が公開されている。その中で、開発職の約半数が「アニメーター関連職」と明かされた。
カプコンは2月28日にシリーズ最新作である『モンスターハンターワイルズ』を発売。また現在開発中のタイトルとして、『鬼武者 Way of the Sword』や、先日発表された『バイオハザード レクイエム』の発売を控えている。今期の営業利益は前年度より約15%増であり、最新作の発売によって今後さらなる増加が見込まれる。

質疑はカプコンの主力タイトル開発についてのものが多く目立った。中でも注目したいのは「開発職において、人員が不足している職種」についての質疑である。
現在、同社のゲーム開発者は、約半数がアニメーターなど、キャラクター等の動きや演出に関わる職種で構成されており、その分野の人材確保を強化しているという。さらに近年子会社化した企業も同分野に強みを持つ会社であり、同社の開発力強化に寄与しているとのこと。同社の決算短信によると開発職のスタッフは2025年3月末で2,846名であり、その半数となると、約1400名あまりがアニメーター関連の職種となる。同社はゲーム開発において、特にアニメーションを重要視しているようだ。

同社のゲームはどのタイトルも上質なアニメーションが演出されているが、特にリッチな一例として挙げられるのが『モンスターハンター』シリーズ。同シリーズでは『モンスターハンター:ワールド』を起点に、3Dアニメーションにおいても、AAA級の大規模開発タイトルとしての進化を追求し、よりリアルで多彩な表現が取り入れられてきた。同作ではモンスターの一部モーションにも演者によるモーションキャプチャーが利用されており、細かな調整をアニメーターなどが行っているとのこと(関連記事)。
最近では3Dモデルの向上も著しく、美麗な3Dモデルを用いる作品も多くなっている。一方で「映像」においてクオリティを感じさせるのはアニメーションだ。アニメーションがぎこちなければ、品質の低いゲームだと見られやすくなっている。カプコンが主力で開発しているようなフォトリアルなAAAゲームならなおさらのこと。プレイヤーへ違和感を抱かせないために、アニメーションへの注力は必須なのである。
カプコンは2023年に「クリエイティブスタジオ」を新設(プレスリリース)。同スタジオは国内最大級の撮影範囲(11m×15m×5m)に最新型の超高解像度カメラを含む150台を設置しており、大規模なモーション収録が行えるという。さらに内製ゲームエンジンである「RE ENGINE」によるゲーム開発環境と連携した収録も可能で、同社がモーションキャプチャー分野に大きな投資をおこない、注力していることがわかる。なお、最近カプコンが子会社化したソードケインズスタジオは、映像製作に強みをもつ。アニメーションにおける実績も多く、そうした会社を傘下に入れたことを含め、カプコンがアニメーションに注力しているのがうかがい知れるだろう。
カプコンは『モンスターハンター』シリーズに限らず、『ストリートファイター』シリーズや『バイオハザード』シリーズなど、国内外に限らず人気の根強いIPが揃っているのも特徴。いずれも3Dモデルなどのアセットが上質になっているものの、それを引き立てるモーションへのこだわりも重要視されているのだろう。今回の採用状況などからは、人材やスタジオへの投資を惜しまず、モーションを内製で手がける同社の方針がうかがえる。