Bohemiaの新レーベルBohemia Incubatorが本格タクティカルFPS『Project Argo』のプロトタイプを無料公開

Bohemia Interactive(以下、Bohemia)は11月1日、無料でプレイできる5v5のタクティカルFPS『Project Argo』のプロトタイプを公開した。対象プラットフォームはPC(Windows)。本作は実験的な作品や開発中のタイトルのプロトタイプを扱うBohemiaの新レーベルBohemia Incubatorのローンチタイトルである。

Bohemia Interactive(以下、Bohemia)は11月1日、無料でプレイできる5v5のタクティカルFPS『Project Argo』のプロトタイプを公開した。対象プラットフォームはPC(Windows)。本作は実験的な作品や開発中のタイトルのプロトタイプを扱うBohemiaの新レーベルBohemia Incubatorのローンチタイトルである。『Project Argo』は『Arma 3』のModとして開発をスタートしたが、現在は『Arma 3』を所有していなくてもプレイできるスタンドアロン作品として公開されている。

 

「無料で遊べる本格タクティカルFPS」という謳い文句に偽りなし

『Project Argo』は『Arma 3』のアセットを利用することでクオリティを担保しつつ、展開の速いタクティカルFPS向けにゲームメカニックを調整した作品となっている。5v5のチーム対戦型マルチプレイとして3つのゲームモードが用意されており、勝利を勝ち取るためには、チームワーク、戦術、そしてプレイヤースキルが鍵となる。現時点では欧州サーバ上でのマッチングが多いため、快適にプレイするためには、ある程度のネット回線速度も求められる。

ゲームモードは「Link」「Raid」「Clash」の3種類。「Link」は短期決戦型のエリア制圧戦。制圧すべきエリアには順番が決められており、各チームは自陣に割り振られたエリアを「1」「2」「M」の順に確保していく。相手の進行を邪魔しつつ、先に最終エリアの「M」を確保することが目的となる。こちらのモードではリスポン制限が無く、せわしなく戦況が変わるラッシュ系のモードとなっている。

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「Raid」は3ラウンド先取制で、ラウンドごとに攻守が入れ替わるモード。マップ上にマーキングされる3つのロケーションのうち1か所にターミナルが配置され、攻撃側はそのターミナルを見つけ出し、ターミナルからデータをダウンロードし終われば勝利。同じラウンド内でのリスポンはなく、「Link」よりも慎重な行動が求められる。

「Clash」は7ラウンド先取制のエリア制圧戦。ラウンドごとに攻守が入れ替わり、指定された1つのエリアを巡って争う。「Raid」と同じくラウンド内でのリスポンはない。「Link」と「Raid」は3ラウンド先取制で、1つのマッチが10分から15分で終わるが、「Clash」は7ラウンド先取制ということで、展開によっては30分から40分の長期戦が味わえる。

「Clash」モードでは勝ち越しているチームが、各ラウンドのはじめに制圧対象エリアを選択する
「Clash」モードでは勝ち越しているチームが、各ラウンドのはじめに制圧対象エリアを選択する

ゲームモードを問わず、各ラウンドの途中ではマップ上にエアドロップが投下され、確保したチームはラウンドを有利に進められる。もちろん、エアドロップを奪いにくる相手チームを待ち伏せする戦略も十分に有効だ。なお、リスポンがない「Raid」「Clash」モードで死亡した場合、観戦モードで他のチームメイトのプレイを見ることができる。死亡時のキルカメラは存在しないため、倒される前に相手の位置を確認できなければ、チャットで相手の位置を味方に知らせることはできない。

マップの数は各ゲームモードごとに1種類ずつ。2週間ごとに予定している定期アップデート時に新しいマップと入れ替わる。この定期アップデートでは、マップだけでなく武器のロードアウトも更新されるとのことで、常に新鮮味のあるゲームプレイが楽しめそうだ。なお、本作の舞台となる「Malden Island」はBohemiaの初期作品『Operation Flashpoint: Cold War Crisis』に登場した島を『Arma 3』のアセットを用いて再構築したもの。この「Malden Island」は、2017年6月に『Arma 3』の無料DLCとしても提供される予定だ。

 

Bohemiaの新境地を切り開くBohemia Incubator

Bohemia Incubatorは『Project Argo』と同時に発表されたBohemia内の新しいレーベルであり、開発中のタイトルのプロトタイプや、新しいコンセプトを実験する場として新設された。Bohemiaの注力タイトルはあくまで『DayZ』と『Arma』『Take On』シリーズであることに変わりはないが、Bohemiaはこの数年間で従業員を3倍まで増員しており、実験的な作品に人員を割く余裕が生まれたようだ。今後はBohemiaが開発している新しいエンジン「Enfusion」を使った実験的な作品に取り組むことも予定している。

BohemiaのJarek Kolář氏によると、『Project Argo』は『Arma 3』のアセットを利用しているため、プログラマーやデザイナーの工数をかけずに開発できたという。Bohemiaというと『Arma』シリーズや『DayZ』のように時間をかけてじっくりプレイするタイトルが多く、『Project Argo』のような展開の速いタクティカルシューターは初となる。Kolář氏は本作の開発を通じて対戦型マルチプレイFPSのゲームデザインを学び、ノウハウを蓄積することでBohemiaをデベロッパーとして成長させることを目標としている。また本作で適用されていくであろう改善点は『Arma 3』にも当てはめられるため、相乗効果も生まれるようだ。

このようにBohemia Incubatorは利益追求ではなく実験の場としての側面が強い。実験的なレーベルの性質上、Bohemia Incubatorから公開されるプロトタイプのタイトルは途中で開発がキャンセルされる可能性もある。正式リリースが決まっているタイトル以外は無料提供となるが、プレイする前には十分な理解が必要だ。

Bohemia Incubatorより正式リリースが決まっているタイトルとしては『Ylands』があり、本稿執筆時点では有料のアルファ版と無料のトライアル版が公開されている。『Ylands』はローポリゴンの3Dサンドボックスゲームであり、自動生成された世界の中で自由に探索、採掘、建築を楽しめる。シナリオエディターも搭載されており、プレイヤーはオリジナルのシナリオをつくることができる。リアル路線のビジュアルを持つ作品が多いBohemiaとしては珍しく、かわいらしい画風となっている。これにはBohemiaスタッフによる「親子で一緒にプレイできるゲームをつくりたい」という思いが背景がある。Bohemiaが1999年に設立されてから17年が経ち、家庭を持つスタッフが増えてきたことも要因となっているようだ。また、自社エンジンを持つBohemiaとしては珍しくUnityエンジンを採用している。『Ylands』のトレイラーは下記より確認できるため、Bohemiaの新たな取り組みに興味を抱いた方は是非『Project Argo』とあわせてチェックしてみよう。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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