先日、Bethesda Softworks(以下、Bethesda)は、シリーズ最新作『The Elder Scrolls VI』(仮題)を開発中であると、ナンバリングタイトル続編の存在を明らかにした。前作の『The Elder Scrolls V: Skyrim』が発売された2011年から早5年。そろそろ次回作の発表が期待される中、同社はリリース直前になるまで公式発表を控える意向を示した。ゲームが形になる前から積極的にプロモーションを打ち出すような過剰宣伝に慎重な理由を、同シリーズを世に送り出してきたマーケティング担当者が語っている。
焦らす暇があったら開発に集中したい
『The Elder Scrolls』シリーズは、1994年の第1作『The Elder Scrolls: Arena』にはじまり、1996年の第2作『The Elder Scrolls II: Daggerfall』、シリーズで初めてオープンワールドになった2002年の『The Elder Scrolls III: Morrowind』、Windows/PlayStation 3/Xbox 360の3機種に対応した2006年の『The Elder Scrolls IV: Oblivion』、そして2011年にリリースされたナンバリング最新作『The Elder Scrolls V: Skyrim』と、スピンオフ作品を除けば全5タイトルが世に送り出されてきた。また、2014年4月からはMMORPGの『The Elder Scrolls Online』が稼働している。今年6月には、シリーズ屈指のヒット作をリマスターで復刻する『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition』が発表され、10月28日の発売を目前に控えている。
先日、開発スタジオBethesda Game Studiosでシリーズを手がけてきたゲームクリエイターTodd Howard氏は、「E3 2016」におけるライブストリーミング配信の中で、ナンバリング第6作となる『The Elder Scrolls VI』(仮題)が、すでに開発段階であることを明らかにした。その際、ファンやコミュニティの関心に希望を持たせる一方で、長期的なプロジェクト故に慎重な情報公開の重要性にも言及していた。この件に関して、BethesdaでPRとマーケティングを統括するPete Hines氏は、業界メディアPC Gamerに対して、次のようにコメントしている。「ゲームが発売される何年も前から(シリーズ最新作に関する)最初の情報を耳にすることはないだろうね。絶対に。次ではないし、その後でもないよ」。
ゲーム業界において、作品がほとんど形にすらなっていない段階から積極的に“Hype”していく早期PR戦略は決して珍しいことではない。中には、最初の発表から何年経っても完成の目処が立たないタイトルもある。そんな中、昨年11月にリリースされたBethesdaの看板タイトル『Fallout 4』は、同年初夏の正式発表からわずか数か月でローンチを迎えた。巨大プロジェクトのプロモーションにおいて、同社がいかに情報公開のタイミングやスピード感、関心の持続性を重要視しているかがうかがえる。「PRマーケティング戦略の観点から私たちが何をやるにしても、いつだって開発チームに直接影響を与えることになる。そうだろう? 動画を撮影しようとするにも、デモを組み上げようとするにも、単なるゲーム開発の枠組みを越えた追加タスクを課してしまうことになるのだから」と、Hines氏は語る。
実際、ゲームが完成する前から過剰な宣伝を続ける行為は、定期的なPRコンテンツの作成に余計な開発資源を消費するばかりか、大した進捗もないまま年月だけが経過していけば、ユーザーの関心は逆に薄れていってしまうというデメリットがある。また、過剰にユーザーの期待を煽り過ぎたために、発売後のレビューが赤く染まってしまった事例などいくらでもある。もちろん、Bethesdaが短期間のプロモーションで大きな成果を上げられるのは、長年にわたり築かれてきた『The Elder Scrolls』や『Fallout』のブランド力あっての賜物だろう。しかし、ゲームは中身が全てである。シリーズをとおして、箱庭ゲームの代名詞ともいえる不動の地位を確立してきた同社には、ファンを焦らすための小細工など必要ないのかもしれない。