巨大スタジオで”インディーらしいゲーム”を作った開発者、本物のインディーデベロッパーに

 

元UbisoftクリエイティブディレクターYoan Fanise氏は、フランスのモンペリエに新規スタジオDigixartを設立したと発表した。Yoan Fanise氏は、Ubisoftに14年間勤めていた開発者である。海外でベストアクションゲームの1つとして度々挙げられる『Beyond Good & Evil』や、第一次世界大戦をテーマにしたアドベンチャーゲーム『Valiant Hearts: The Great War』の開発に参加してきた。"インディーらしいゲーム"を巨大スタジオにて開発したFanise氏は、巨大スタジオを抜け、本物のインディーデベロッパーとなる道を選んだ。

 


真のインディー

Yoan Fanise氏は、今年3月にUbisoftを退職しており、その理由を海外メディアGamasutraに語っている。Fanise氏は、Ubisoftが取り組んでいる"インディーらしいゲーム開発"の流れのなかで、『Valiant Hearts: The Great War』を開発し賞賛を浴びたが、後にトリプルA級開発に戻るよう指示されたことを示唆していた。「大成功しているレストランが、一部のコックに駐車場で屋台をやることを許可した。そして突然、レストランに戻るように指示した。あなたならどうする?」。

Yoan Fanise氏は、Anne-Laure Fanise氏と共にDigixartを設立した。「レンタルする代わりに、自前の屋台を作ったようなものだよ」と、Fanise氏は海外メディアGamasutraに語る。『Valiant Hearts』がBAFTAでアワードを受賞した後、世界中にある最高のスタジオに参加するか、モンペリエに残って1からスタジオを作るか、悩んでいたという。最終的には挑戦する価値のあるチャレンジだと感じ、後者を選んだ。スタジオの名前は、『Valiant Hearts』が"第10のアート"と呼ばれ賞賛されたことから、「digit X」と「art」をかけている。

地元紙に取り上げられるDigiXart設立 (画像出典: Instagram)
地元紙に取り上げられるDigiXart設立(画像出典: Instagram

GamasutraとのインタビューのなかでFanise氏は、インディースタジオを立ち上げた理由を、まず第1に「完全なる創造の自由」があるからだと説明した。市場の流行やトレンドでは恐らく見られないような、挑戦したいアイディアが沢山あると続けている。

2つ目の理由としては"数"を挙げた。「フィジックスなんかのように、ゲーム開発において数は重要なパラメータだ。もし開発会社が大量の"数"を持っていれば、それを動かすのにさらなるエネルギーが必要になり、反映されるのも遅くなる」。バグトラッキングや課題管理、長いミーティングなどは必要なく、プロトタイプを作り、ゲームパッドを手に持ちながら話すだけでいい。少人数での開発へ移行し、よりスピーディに動けることは、信じられないほどパワフルだとFanise氏は説明している。今後、会社が成長するにつれ巨大化し動きが重くなってしまう可能性はあるが、現時点ではその問題はないともした。

現時点でDigixartの第1弾タイトルは発表されていないが、近日中にも公表予定だという。現在、同スタジオに所属しているのはFanise氏らを含めて6人。"意義あるゲーム"を開発することを目指し、フランスのモンペリエから、真のインディーデベロッパーとして始動する。

 

 


初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。