『Bear Simulator』開発者、今後アップデートを行わないことを宣言するも12時間後に撤回


『Bear Simulator』の開発者John Farjay氏はKickstarterを更新し、今後同作のアップデートをおこなわないことを宣言した。『Bear Simulator』はKickstarterで10万ドルのクラウドファンディングで成功していたサバイバルアクションゲームだ。熊になりきり大自然を徘徊し、ほかの野生動物と戦い、食べ物をたべることで熊は成長していくなど単なる『Goat Simulator』の模倣に終わらないオリジナリティがSteamで一定の評価を得ていた。しかし、開発者のFarjay氏はこれ以上アップデートを続けていくことが困難だという心中をKickstarterの更新で明かしている。

[perfectpullquote align=”full” cite=”” link=”” color=”” class=”” size=””]『Bear Simulator』は良い評価を得ていない。ほかにもさまざまな問題があり、今後アップデートを続けていく理由がなくなった。僕はただKickstarterの支援者にゲームを届けたかっただけなんだ。それにもうこれ以上の「ドラマ」は僕の手に負えないんだ。今まで応援してくれて本当にありがとう。リクエストの多いいくつかの仕様変更や修正などには応えるつもりだよ。ひとつだけ言いたいことは、このPCゲームの開発は間違っていた。生産的かつ幸せであり続けることが困難だったんだ。[/perfectpullquote]

Kickstarter

Farjay氏は『Bear Simulator』の評価がよくないと言及しているが、現在Steamレビューは「ほぼ好評」となっておりやや辻褄が合わない。この氏のネガティブなリアクションには氏がほのめかしていた“ドラマ”が関連しているのかもしれない。

 

ドラマの背景にあったもの

『Bear Simulator』はリリース時から話題を集めており、その注目は世界的YouTuberのPewDiePie氏の目にも留まった。しかし氏は同作を宣伝というよりはネガティブな形で取り上げたようだ。

現在YouTubeでの動画は非公開となっているが、氏の公式サイトでは動画が公開されている。PewDiePie氏は『Bear Simulator』をあまり気に入らなかったようで、動画内で幾度も同作を酷評しており「レビューでは称賛の声が多かったが、このゲームは正直ひどい。」と感想を漏らし、最終的に返品をおこなった。

https://twitter.com/pewdiepie/status/704343926770106370

Twitterでは「まだ『Grass Simulator』レベルにも至っていない」と、芝生を舞台にした賛否両論の怪作を比較対象にあげて同作を批評している。

PewDiePie氏は何百万人もの視聴者を抱えており、氏がアップロードした動画はゲームの売上に良い影響を及ぼしていることが過去にも報告されている。しかし、動画内での扱いがネガティブならば当然悪い影響が及ぶことになり、Steamの否定的なレビューの中には動画の影響を感じさせるものもあるようだ。Farjay氏が言及する“ドラマ”とは、この現象だと指摘する声もある。しかし、動画の投稿があった2月29日以後もFarjay氏は数回Kickstarterのアップデートを続けており、この“ドラマ”がPewDiePie氏の一件と関係しているか断言するのは難しいだろう。

 

コンディションにバラつきのあった開発者

また『Bear Simulator』を開発するFarjay氏は気分やモチベーションに不安定さを抱える開発者のひとりでもある。Kickstarterでは2015年に半年ほど音信不通になったかと思えば、2016年にはいると2月に10回の更新をおこなうなど、時期によってアップデートにバラつきがあることが指摘されている。こういった不安定さを持つFarjay氏は、否定的なレビューによって精神的なショックを受けてしまったのかもしれない。

頻繁にアップデートがおこなわれ、Steamでの配信がはじまった矢先の開発終了宣言はユーザーに驚きを与えている。3月2日のKickstarterの更新では改善したい要素をリスト化しており、今後の開発に意欲を見せていただけに尚更衝撃は大きいだろう。『Gears of War』などを手がけたCliff Bleszinski氏も、この件について複雑な気持ちを抱えていることを明かしている。現代において、ゲームを開発する上でインターネット上のユーザーたちとの関係を断ち切ることなど不可能であり、時として彼らは無思慮に開発者と激しく対立することもある。Bleszinski氏はそういったインターネットの意地悪い部分に触れつつも、「ようこそゲーム開発へ」と伝え、Farjay氏がゲームデベロッパーの世界へ入門したことを歓迎した。

この件へのユーザーの反響は大きく、Kickstarterのコメント欄は励ましや元気付けるエールで溢れ、コミュニティの温かさを示すものとなっている。

[perfectpullquote align=”full” cite=”” link=”” color=”” class=”” size=””]オーケー、イライラしたりもしたけど、この雰囲気じゃ投げ出すことできないね。でも、あんまり不平不満ばかりいうのはやめてくれよ!次回のアップデートは面白おかしいものにするからさ。[/perfectpullquote]

Kickstarter

ユーザーからのエールを受けたFarjay氏は、アップデート停止を告知した約12時間後に、Kickstarterページのコメント欄にて気持ち新たにまたアップデートを続けていくことを宣言している。