先週末、フランス・パリにて120人以上が死亡、300人以上が負傷する痛ましい同時多発テロ事件が発生した。この事件にともない「パリのテロ事件で犯人たちが交信にPS4を使用していた」というニュースが国内外を駆け巡ったが、これは海外の大手メディア「Forbes」の曖昧な記事から拡散した誤った情報であるようだ。現時点ではPS4を使用した確証が一切無いことを、海外メディアのKotakuやEurogamerが指摘している。
情報元となったのは、ForbesのPaul Tassi記者が執筆した「パリのISISテロリストは攻撃について話し合い計画を立てるためPlayStation 4を使用したのだろうか(How Paris ISIS Terrorists May Have Used PlayStation 4 To Discuss And Plan Attacks)」という記事だ。この記事では、「ブリュッセル周辺で家宅捜索が行われ、その押収物のなかに最低でも一つのPlayStation 4が含まれていた」という事実が記されており、以降はTassi記者がPS4がテロに使用される可能性を過去の事例や発言などから推測する内容となっている。
問題となったのは、Tassi記者が取り上げたベルギー政府の副首相兼内務相ヤン・ヤンボン氏の発言である。
この発言は、海外メディアPOLITICOが主催した11月10日火曜日のWhatWorksイベントにて出てきたもので、パリの同時多発テロ事件を指した発言では無い。一方で記事内では過去の発言であることが強調されていなかったためか、大手含む多くのメディアが「ベルギー政府がパリのテロ事件でPS4が使用された証拠をつかんだ」と認識、「PS4がパリのテロ事件で使用されていた」あるいは「可能性がある」と報じたのが、ことの顛末だ。現時点では「家宅捜索で最低1台のPlayStation 4が押収された」というのが、唯一の事実である。犯人やその関係者がPS4をテロ攻撃のために使用したのか、あるいは単なるゲーマーなのかは、ほぼ誰にもわからないだろう。
ただ今回誤ったニュースが拡散した一方で、PlayStation(PlayStation Network)ないしXbox LIVEやオンラインビデオゲームのチャットが犯罪に利用される可能性は以前より指摘されてきた。2013年に元局員のEdward Snowden氏がリークしたNSAの機密情報では、米国や英国の諜報員が『Second Life』や『World of Warcraft』、またXbox LIVEのチャットをチェックしていることが記されていた。今年5月にはオーストラリアの14歳の青年が、PlayStationコンソールを通じてシリアのイスラム国家過激派グループから、爆弾の製造方法を教えてもらった事件も報じられている。
ソニーの代表者はKotakuとEurogamerの問い合わせに対し、PlayStation 4を使用しているユーザーを保護する責任を負いつつ、攻撃的で違法な行為があった場合には積極的に報告することを約束している。