Activision Blizzard(以下、Activision)は、King Digital Entertainment(以下、King)を59億ドル(約7116億円)で買収したことを発表した。Activisionの過去12か月間の連結売上は47億ドル、Kingは21億ドル。今回の買収により、Activisionの2016年度の年間総売上は30%増加すると予測されている。Kingの株主への配当金は1株当たり18ドルで、これは2015年10月31日の終値に対して20%のプレミアムとなり、Kingの1か月出来高加重平均株価に対しては23%のプレミアム、3か月出来高加重平均株価に対しては27%のプレミアムに相当する。
Activisionは『Warcraft』や『Call of Duty』などといったAAAタイトルを数多く手がけており、newzooによると、2015年6月時点のゲーム収益ランキング5位の企業である。Kingは収益ランキングは10位であり、『Candy Crush』を主力にFacebookやモバイルデバイス向けのソーシャルゲーム企業といったイメージが強い。
今回の買収でActivisionは新たなパイを狙っているのだろう。コアゲーマーをうならせ続けていた企業が、突然ソーシャルゲームにシフトしようとしているわけではないはずだ。Activisionはすでにモバイル向けに、Facebookアプリ『Backyard Monster』のクローンである『Call of Duty: Heroes』(日本では未配信)をリリースしており、1年ほど前からライトなゲーマーをターゲットにした作品の展開を模索している。
その背景には、さきほどの収益ランキングで4位に位置するElectronic Arts(以下、EA)の存在があるのではないだろうか。EAはActivision最大のライバルといっても過言ではない企業で、2010年にはiOS・AndroidゲームのパブリッシャーChillingoを買収し、数年前からモバイルゲームに力を入れている。すでにモバイルゲームはEAの売上を支える柱の1本となっている。
ほかにも、Take-Two Interactiveは『Sensei Wars』(2015年2月サービス終了)、Ubisoft Entertainmentは『Battle of Heroes: Land of Immortals』(2015年10月サービス終了)と、PCや家庭用ゲーム機で有名な企業も『Backyard Monster』のクローンをリリースしている。いずれも代表的なクローン作『Clash of Clans』を超えることはできず、サービス終了となってしまったものの、モバイル市場での成功を狙うことは重要である。
Activisionは『Hearthstone』で成功を収めているといえるが、ライトなユーザー向けのゲームとはいいがたい。ライバル企業と比較すると、モバイル市場で若干出遅れてしまっているActivisionは、今回の買収でライト層の獲得に成功するだろうか。