今月25日朝7時に、オンラインゲーム会社NEXON Koreaのオフィスに車で突撃したとして、中国籍の李と名乗る男性(33歳)が逮捕されたことをThe Korea Heraldが報じている。車の突入によって玄関ガラスは割れてしまったものの、幸いにも負傷者はなし。男性は無免許で、体内からはアルコールが検出されており酩酊状態だったと報告されている。
警察から動機について尋ねられた男性は「ゲームに自分の人生をめちゃくちゃにされ、腹が立っていた」と話したという。Chosun.comによると、このゲームとは『Dungeon & Fighter(日本名:アラド戦記)であり、あまりに熱中しすぎた挙句ほかのことができずに参っていたのだという。もともとは城南市に住む兄を訪ねて韓国に入国していたが、酒を飲んでドライブしているうちに、死ぬつもりでNEXON Koreaに突入しようという決意に至ったとのこと。ちなみに運転していた車は兄のものだとされている。逮捕後はみずからの過ちを認め反省の弁を述べているようだ。
以前にも『Fallout 4』に没頭しすぎたあまり、職と妻の両方を失ってしまいBethesdaを訴訟した男性が話題となったが、今回のものは訴訟どころか死者すら出しかねない刑事事件であり、より深刻なケースだと言える。ゲーム依存は、ゲームが没入性に優れた娯楽であるがゆえに切り離せない社会問題だ。グローバルに問題視されていることは間違いないが、より依存性の高いオンラインゲーム産業が栄えている東アジアは特に事件という形になりやすい。韓国はこういったオンラインゲーム依存による死亡が現在までに多く報道されており、台湾でもインターネットカフェでユーザーが遺体で発見されるケースもいくつか報告されている。こういったトラブルのなかには、プレイしている本人ではなく子どもが死亡するケースもある。一昨年には、韓国の23歳の男性がゲームに集中するあまり、自身の子どもを10日間放置したうえに死亡させる事件などが発生している。
韓国では、こういったゲーム依存症を防ぐために、2010年に“シンデレラ法”と呼ばれる「シャットダウン制」を導入した。これは深夜0時から早朝6時の間、16歳未満の青少年がオンラインゲームをプレイできなくなるというもの。この法律は実際に機能したようだが、一方でこの法律の影響でオンラインゲーム人口は減少、産業自体が縮小してしまったとの指摘が相次いでいる。この事態を重く見た韓国政府は、2014年には強制シャットダウンではなく親がシャットダウンをするかどうか選べるようにするなど対応をとっている。さらに今年に入ってから、シャットダウン法を緩和することを改めて明言している。
ちなみに『Dungeon&Fighter』はSteamでもリリースされているが、日本からはアクセスできないようになっている。