大ヒットゲーム『黒神話:悟空』、“日本語未実装箇所あり”なのに怒られず面白がられる。見せ方の工夫と質の信頼


『Black Myth: Wukong(黒神話:悟空)』のゲーム内翻訳が、一部未実装であることが話題となっている。しかしながら、不満や批判というより、面白おかしく捉えられているようだ。

『黒神話:悟空』は、Game Scienceが手がける、西遊記を題材にしたアクションゲームだ。プレイヤーは孫悟空を思わせるキャラクター「天命人」を操り、危険と不思議が溢れる西遊の旅路に出る。西天(天竺)を目指す冒険のなかでは、強大な妖怪たちも天命人の前に立ち塞がる。Unreal Engineを用いて描かれる美麗なグラフィックと、迫力や手応えある戦闘が楽しめる。中国産ゲームとして中国ユーザーに強く支持されており、発売から3日で売上1000万本を記録している。

そんな『黒神話:悟空』において、ゲーム内言語が一部未実装であると注目を集めている。発端となったのはインフルエンサーのフェイさんの投稿。同氏は、3章の一部テキストが未翻訳であるとしつつ、その伝え方が面白いと報告。X上で反響を集めている。


フェイさんが閲覧しているのは遊記だろう。遊記は図鑑のような敵やアイテムの解説がされる箇所で、いわゆるフレーバーテキストによって世界観の描写がされる。図鑑においては未翻訳箇所が散見される。通常、日本語未翻訳の場合は批判が集まりやすい。その場合は他言語そのままで置いたり、あるいは自動翻訳で仮置きしたりというパターンが多い。しかし本作では、「翻訳者が現在作業中」と潔く明示されており、その点が笑いを呼んでいるようだ。

そして批判ではなく笑いを生んでいる理由のもうひとつとして、ローカライズの質が高いという点もあるだろう。『黒神話:悟空』は、西遊記の知識を前提としたストーリーであり、中国神話をまじえられているため、話や設定が難解で、セリフも独特の言い回しである。本作の中日ローカライズにおいては、日本語として読みやすいような配慮がなされており、理解しやすいテキストで実装されている。


筆者は中国語が堪能ではないので、中日翻訳そのものの質は問えないものの、日本語として読みやすいと感じた。高品質なローカライズが実装されているからこそ、未翻訳箇所があることにも寛容な態度が向けられているのかもしれない。また本作の本筋ストーリーではなく、図鑑といったサブコンテンツ箇所が未翻訳という点、図鑑のテキストもかなり量が多いといった点も留意したいところである。

フェイさんの投稿には、同作のローカライズに携わったという翻訳者の壇上氏も反応。お詫びを入れている。評価の高い日本語ローカライズについて、「優秀なチームのサポート、表現に大きな裁量を与えてくれた開発、全てが嚙み合ったおかげ」とコメント。チーム体制について、賛辞を送っている。

とはいえ、未翻訳箇所は少ない(あるいはない)にこしたことはない。それはチームも理解しているようにも見え、壇上氏も諸々作業しているようなので、日本語版完成を待ちたいところである。

『Black Myth: Wukong(黒神話:悟空)』はPC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS5向けに配信中だ。Xbox Series X|S向けにも展開予定で、こちらの発売日は未定である。