『学園アイドルマスター』が「デッキ構築ゲーム」の文脈で一部界隈から評価される。『Slay the Spire』ではないが、それっぽいビルド作りの楽しさはある

バンダイナムコエンターテインメントは5月16日、『学園アイドルマスター』を配信開始した。『学マス』はデッキ構築ゲームとして一部界隈で評価されているようだ。

バンダイナムコエンターテインメントは5月16日、『学園アイドルマスター』を配信開始した。対応プラットフォームはiOS/Androidで、基本プレイ無料で配信されている。

『学園アイドルマスター』(以下、学マス)は、『アイドルマスター』シリーズの完全新作タイトルだ。開発を担当するのは、サイバーエージェント子会社のQualiArts。プレイヤーは初星学園アイドル科の少女たちを立派なアイドルへと育てることを目指す。本作の舞台となる初星学園は、トップアイドルを育てるための学び舎であるアイドル科が存在する学園だ。プロデューサーは、学園生活の中でアイドル候補たちの能力を成長させていく。

『学マス』は、配信直後のタイミングでセールスランキング一位を獲得して、セールス面でも順調な出足を見せている。持ち味としては『アイドルマスター』シリーズの要素を引き継ぎつつ、QualiArtsの技術力によって、さくっとリッチに遊べるゲームに仕上がっている点があげられるだろう。またその他の文脈として、『学マス』はデッキ構築ゲームとして一部界隈で評価されているようだ。


たとえばX上で「デッキ構築」といったワードで検索をかけると、その文脈で『学マス』を評価する指摘が散見される。公称ジャンルは「歌とダンスが上手くなれるアイドル育成シミュレーション」ながらも、ユーザーたちが独自にデッキ構築ゲームジャンルとして分析しているようだ(筆者もそのひとりである)。具体的にプレイフィールが『Slay the Spire』に似ているとする声もあるようだ。『学マス』を評価する際に、同作を引き合いに出す投稿も見受けられる

ではどのへんが『Slay the Spire』なのか。それは「プレイアブルキャラのタイプ性質が決まっている」「カードベースのバトル」「パラメータのシナジーが重要」「細かいパラメータ管理」などがあげられるだろう。本作はレッスンを繰り返し大会に出る。『Slay the Spire』における雑魚敵バトルがレッスン、ボスバトルが大会にあたる。またレッスンの中にもランダムでSPレッスンというのが登場し、それはいわゆるエリート雑魚バトルになるわけだ。ようするに、レッスンや大会はある種のバトルで、そのバトルのプレイフィールがデッキ構築ゲームっぽいというわけだ。


ただそれだけでは『Slay the Spire』に限らず、ほかのデッキ構築ゲームとも共通である。筆者的には、「プレイアブルキャラによってタイプが決まる」「それぞれのタイプのビルドが面白い」「バフをたくさん積むことが重要」という点が、本作が『Slay the Spire』っぽいと感じやすい要素だと考えている。

本作では大きくタイプとしてセンス型とロジック型があり、2タイプでデッキを組んでいく。一方でセンスとロジックタイプの中でもそれぞれキャラの個性は違っており、たとえば「シールド(元気)をためまくって最後にスコアをぶっぱなす」「とにかくパワー(集中)をコツコツためてコツコツスコアを高める」「スリップダメージ(好印象)をためていき継続的にスコアを稼ぐ」などキャラごとにビルドパターンが存在。もちろん、キャラによって強弱はあるものの、どのキャラでもスコアが稼ぐことができる、そうしたバランスに仕上げられている点が、『Slay the Spire』っぽく感じるのではないだろうか。


ちなみに本作では、カード強化やカード削除によるデッキ圧縮も可能。レリックにあたる所持Pアイテムなども存在しており、デッキ構築ゲームとしてのお約束を一通り揃えている。そうした点も、デッキ構築ゲームとして評価対象になっている一因だといえそうだ。

ちなみに、同じくデッキ構築要素を導入した『アイドルマスター』としては『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』も存在。ただ『学マス』においては、全体的にパラメータが少なくかつ種類が削ぎ落とされており、よりパラメータ管理に集中できる。荒っぽくいえば、全体的に幅が広く数字も大きいリッチな『シャニソン』に対して、『学マス』はミニマルさとシンプルさが特徴だといえそうだ。そうした点も“『Slay the Spire』っぽさ”につながるのだろう。

ただし、当然ながら『学マス』は『Slay the Spire』ではない。現時点では同作よりもビルド幅は狭く、そもそもシステムも共通点はあるものの違うところは大きい。そもそもプレイを助けるサポートカードの入手がガシャ由来のものがほとんど。買い切りゲームとして緻密なバランスの中いろんな遊び方ができるデッキ構築ゲーム、というわけではない。

それでも各キャラのビルドは本作なりに面白く考えられており、デッキを組んでいってコンボが決まる楽しさなどは、なかなか気持ちいいものがある。アップデートによってその幅が広がっていくとなれば、デッキ構築ゲームとしてもさらに面白さの奥行きが広がっていくだろう。今後のゲームデザイン面での進化も楽しみである。

学園アイドルマスター』は、iOS/Android向けに基本プレイ無料で配信中だ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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