任天堂、非公式Nintendo Switchエミュレーターの取り締まりを強化か。非公式エミュレーター2種のDiscordサーバーが閉鎖に追い込まれる

 

任天堂はこのところ、非公式のNintendo Switchエミュレーターへの対策を強化しているようだ。今年に入って、エミュレーター「yuzu」が開発終了したことが話題になったが、その後別のエミュレーターのDiscordサーバーが閉鎖されたという。海外メディアThe Vergeなどが報じている。


「yuzu」は、PC上でNintendo Switch向けゲームを動作させることができる非公式のエミュレーターだ。オープンソースとして無料配布されていた。そうしたなか今年2月、米国任天堂が開発元Tropic Hazeを相手取り提訴。一般的にエミュレーターは必ずしも違法なものというわけではないが、「yuzu」の訴訟では任天堂による技術的保護措置を違法に迂回している点や、同エミュレーターの開発・配布により著作権侵害行為が大きく助長されている実情などが指摘された。その結果、Tropic Hazeは「yuzu」の開発・配布を中止し、さらに任天堂側に240万ドル(約3億7000万円)を支払うなどの条件を飲み、両社は和解した(関連記事)。

その後4月に入って、「yuzu」をベースにして開発された別の非公式Nintendo Switchエミュレーターである「suyu」と「sudachi」について、それぞれのDiscordサーバーおよび開発者アカウントが、Discordによって停止されたことが明らかになった。Discordは海外メディアThe Vergeの取材に対し、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく申請を受けた対応であるとしたうえで、本件に関しては裁判所から差し止め命令も出ていると説明したとのこと。おそらく、DMCAの申請者は任天堂ということになるのだろう。

なおThe Vergeによると、その差し止め命令は「suyu」および「sudachi」に対して直接出されたわけではなく、先述した「yuzu」の訴訟の過程におけるものだそうだ。内容は、「yuzu」関係者が関わるサードパーティが、「yuzu」を宣伝をしたりソースコードを提供したりすることなどを禁じるというもの。ただし、「suyu」「sudachi」の活動に「yuzu」関係者が携わっているのかどうかは現時点では不明である。


「sudachi」の開発者Jarrod Norwell氏は4月11日、Discordから受け取ったというアカウント停止通知メールを公開。それによると、同氏がDiscordの利用規約およびコミュニティガイドラインに違反したための措置であると説明されているが、同氏自身は違反行為を否定している。ちなみに先述した「yuzu」に対する訴訟を受けて、「suyu」のDiscordサーバーにおいては、法的に懸念される発言や関連するコードなどの排除を徹底していたという(Ars Technica)。

それでも対応として十分でなかったのか、あるいはDiscordとして任天堂とのトラブルを避けたい狙いがあったのか、サーバーおよびアカウント停止の背景ははっきりしない。なおDiscord側からは、Norwell氏らに対し何が違反行為にあたるのか詳細は開示されていないとのこと。

任天堂が、自社製品の非公式エミュレーターの排除に動いたことは過去にもあった。そうしたなかで、現行製品であるNintendo Switchの非公式エミュレーターに対して、より積極的に対応し始めた印象を受ける。そして「yuzu」開発元への訴訟および和解内容により状況は大きく変わったようだ。今回の一件からは、エミュレーター開発者だけでなく、それらのコミュニティをホストするプラットフォーム側へのプレッシャーも高まっていることがうかがえる。