デベロッパーのFrogwaresは1月2日、探索型アクション・アドベンチャーゲーム『The Sinking City』について、すべてのプラットフォームでの販売権を取得したと発表した。また、販売権などの問題によりこれまでアップデート配信が停止されていた本作のPC版に向けて、最新バージョンへのアップデートを今後数週間以内に実施することも明らかにしている。
『The Sinking City』は、「クトゥルフ神話」などで知られる作家H・P・ラヴクラフトの作品群から影響を受けて制作された、オープンワールド探索型アクション・アドベンチャーゲームだ。原因不明の水位上昇による浸水被害に遭う街オークモントを舞台に、主人公の私立探偵チャールズ・リードが、街で発生した住民の集団狂気事件や、水位上昇の謎について調査をおこなう。
本作は、2019年6月にPCおよびコンソール向けに発売されたが、2020年7月になって一部のストアから本作が取り下げられる事態が発生。開発元Frogwaresは当時、本作の販売元を務めていたNaconの契約不履行を訴えていた。それによると、開発マイルストーンを達成するごとにNaconから支払われる開発費の遅延が常態化し、さらに本作の発売後になってNaconはマイルストーンの承認を取り消し、支払いを拒んだという。また、本作の権利はFrogwaresに帰属する契約だったそうだが、Naconは自らの保有を主張。結果として両社は、契約解除と解除無効を争い裁判をすることとなった(関連記事)。
『The Sinking City』の権利などをめぐり開発元と販売元の間で対立が発生するなか、Frogwaresは作品からの収益がNacon側に流れないようにするために、各ストアに本作の取り下げを要請したのだった。その後NaconはPC版を配信再開させるが、Frogwaresは自らの作品ながら「購入を勧めない」との異例の声明を出し、Steamでは開発元を支持し不買を訴えるファンによる不評レビューが殺到した(関連記事)。
それから約2年が経った1月2日、Frogwaresは自らが『The Sinking City』のすべてのプラットフォームにおける唯一のパブリッシャーになったと報告した。すなわち、もはやNaconは本作に関与する立場ではなくなったということのようだ。Steamなどのストアページ上でも、販売元の表記がNaconからFrogwaresに書き換えられている。
そしてFrogwaresは、これまでアップデート配信が停止されていた本作のPC(Steam/Epic Gamesストア)版に向けて、バグ修正や最適化が含まれる最新バージョンへのアップデートを、今後数週間以内に実施すると発表。ただし、ユーザーにおいてはいくつか注意点があるとしている。
まず、旧バージョンのセーブデータは、技術的な問題により最新バージョンとの互換性がないとのこと。Steam版においては、2月28日までは旧バージョンを選択してプレイ可能となるそうで、その期日までに本作をクリアすることを検討してほしいとプレイヤーに対し呼びかけられた。
また、新規クエストなどが含まれるDLC「慈悲深い狂気(Merciful Madness)」のPC版への配信も開始される予定だが、同DLCも最新バージョンにしか適用できないという。そのため開発元からは、最新バージョンでゲームを最初からプレイし直したとしても、すぐにDLCクエストをプレイできるように調整されたセーブデータが配布されるとのことだ。このセーブデータはEpic Gamesストア版向けにも提供される。
このほか、弊誌がFrogwaresに確認したところ、アップデートにはローカライズの修正も含まれるとのこと。本作のSteam版においては、日本語ローカライズの問題について指摘するユーザーが一部にみられる。そうした問題も修正されるかもしれない。
【UPDATE 2024/1/4 11:56】
日本語ローカライズについて、販売元の回答を追記
今回の発表では、FrogwaresとNaconとの裁判の行方については言及されていないが、Frogwaresが『The Sinking City』の唯一のパブリッシャーになったということは、開発元側にその権利が帰属するかたちで決着したのかもしれない。また同スタジオは、『The Sinking City』の将来についての情報を近く発表できることを楽しみにしているとも述べており、同IPの新たな展開が計画されている模様である。
『The Sinking City』は、PC(Steam)/Nintendo Switch/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中だ。PC(Epic Gamesストア)版については現在配信停止されているが、近く配信再開されるだろう。