大正時代疾病ノベル『ヒラヒラヒヒル』Steamで“99%好評”スタート。「難病とその患者を取り巻く困難」をまっすぐ描いた社会派ノベルが、いろんな人に刺さる
アニプレックスのノベルゲームブランドANIPLEX.EXEは11月17日、『ヒラヒラヒヒル』を配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam/DMM GAMES/DLsite)。同作はSteamユーザーレビューにおいては11月27日時点で99%好評を獲得するなど、高い評価を獲得しているようだ。
『ヒラヒラヒヒル』は、ビジュアルノベルだ。物語はテキストとイラストで展開され、キャラクターはフルボイスで彩られる、一般的なビジュアルノベルの形式が採用されている。舞台となるのは、架空の大正時代だ。本作の世界では、古来より死んだ人間が蘇る事例が多発し、それらは「風爛症」と呼ばれていた。病として認められつつあった一方で、「外見がおぞましく変化していく」「不安定な言動を見せる」といったことから「ひひる」などと呼ばれ忌避されていた。本作では、風爛症患者を受け持つ医師千種正光、そして田舎から東京に出てきた高等学校の学生・天間武雄の2名の視点を中心に、「ひひる」を取り巻く物語が描かれる。
本作は11月17日に配信され、その後高い評価を獲得している。Steamユーザーレビューでは149件中99%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得。圧巻の評価を得ている。日本語レビューは149件中20件に留まっており、多くのレビューは中国語(簡体字)によるもの、中国圏のゲーマーに高く評価されているようである。
筆者も本作をプレイしたが、その評価は納得。ゲームのテーマこそ「死者が蘇る病」という少々ファンタジーな題材が据えられているものの、テーマとしては「難病」あるいは「精神病」を患った人々と、その患者を取り巻く環境や人々とまっすぐ向き合った内容である。「病を患ったことで人生が大きく変わってしまう」「理解できないものとみなされ暴力的な解決がされがち」「患者の家族に経済的余裕がなくがんじがめになる」「その患者を想うからこそいっそ殺めたくなる」など、現代の病にも通ずる普遍的な問題が数多く登場。かなり考えさせられる物語に仕上げられている。暴力含めショッキングな表現は登場するものの過激さに頼ってはおらず、上質な音楽やCG、そして誠実なテキストで描かれる物語が、人々の心に刺さっている印象だ。
本作の制作においては、企画・シナリオを瀬戸口廉也氏が担当している。同氏は、『CARNIVAL』『SWAN SONG』『MUSICUS!』などのシナリオを手がけてきたシナリオライターだ。同氏は直近の作品では、2022年9月に発売された『BLACK SHEEP TOWN』にて脚本・監督を担当。同作のSteamユーザーレビューでは、記事執筆時点で81件中98%の好評を得てステータス「非常に好評」を獲得。前作もまた高い評価を得ているわけだ。
スラムにおける息苦しさを描く前作から世界観こそ変わったものの、人間社会を生きる困難を丁寧に扱いながら、キャラたちを通じて繊細に描く“瀬戸口節”は健在。あるいは洗練されており、そうした作風が評価を支えているのは間違いないだろう。本作は特に同氏の過去作を遊ばずとも楽しめるので、活字を読むのが好きな方は購入を検討してみるといいかもしれない。
『ヒラヒラヒヒル』は、PC(Steam/DMM GAMES/DLsite)向けに配信中だ。Steamでは現在10%オフのセール中である。