『スーパーマリオRPG』リメイク版の出来を、“開発に携わらなかった”オリジナル版スタッフが喜び感謝する。今昔を知るキーマンの関与もクオリティを後押しか

任天堂は11月17日に『スーパーマリオRPG』リメイク版を発売した。すでに高い評価を獲得しているが、リメイク版に携わらなかったオリジナル版スタッフもその出来を称賛しているようである。

任天堂は11月17日に『スーパーマリオRPG』リメイク版を発売した。同作はレビュー集積サイトMetacriticメタスコア/ユーザースコアで83を記録。安定した評価を獲得しているほか、同作に携わらなかったオリジナル版スタッフもその出来を称賛しているようである。

『スーパーマリオRPG』は、スーパーファミコン向けに1996年に発売された同名作品のリメイク版となる。舞台は『スーパーマリオ』シリーズの世界。あるとき空に巨大な剣があらわれクッパ城めがけて落下し、人々の願いをかなえるスターロードが壊されてしまう。散り散りになった欠片はスターピースとなり、世界中に散ってしまった。マリオはクッパやピーチのほか、マロや、ジーノと共に各地を冒険。スターピースを集めて願いのかなう平和な世界を取り戻すことを目指す。


リメイク版においては、オリジナル版のシステムをベースに追加要素などをほんのり盛り込みつつ、ビジュアルやサウンドを現代向けにリメイク(サウンドはオリジナル版のものを選択可能)。作品の魅力やテイストは据え置きに、今風に作り直しているわけだ。

本作の開発座組については、発売前後に際して発覚している。任天堂と共同で本作の開発をリードしたのはアルテピアッツァだ。『ドラゴンクエスト』シリーズの関与実績は多く、オリジナル作品としては『オプーナ』も開発。アートとリメイクには定評のある会社だ。同社代表取締役の眞島真太郎氏がコンセプトアート/アートディレクターとして、同社のもうひとりの顔である杉村幸子氏がプランニングディレクターとしてスタッフロールに名を連ねるなど、深く関与していることがうかがえる。


また本作にはオリジナル版のスタッフも一部関与。音楽はおなじみ下村陽子氏が参加しているほか、オリジナル版で共同ディレクターを務めた前川嘉彦氏もスーパーバイザーとして参加。またオリジナル版でも関与したスクウェア・エニックスもプロデュースやプロジェクトマネジメントでリメイク版に参加している。一方で、オリジナル版に携わったスタッフでリメイク版に参加しなかったスタッフも多い。しかしそうしたスタッフもリメイク版を称賛しているようだ。

たとえば、オリジナル版では前川氏と同じく共同ディレクターを務めた藤岡千尋氏は、以前よりリメイク版には関与していないことを明らかにしていた。しかし個人的にはリメイク版を入手したようで、すばらしい仕事を楽しみたいとコメントしている。

より火力が高いのは、倉島一幸氏だ。オリジナル版でモンスターデザインやキャラクター監修をした人物。倉島氏は『moon』のキャラデザや『もぎたてチンクルのばら色ルッピーランド』のグラフィッカーや声を担当したアーティストで、現在はOnion Gamesに所属。倉島氏はもとより自分の携わった作品への想いを、しばしばSNS上で表現する熱い人物であるが、今回も例外ではなかったようだ。

同氏は11月25日に、『スーパーマリオRPG』リメイク版をクリアしたと報告。エンディングではいろいろな感情が込み上げ落涙したとコメント。リメイク版のスタッフに感謝の言葉を述べている。

藤岡氏・倉島氏ともに、リメイク版を関与していないにもかかわらず、自身でゲームを遊びリメイク版スタッフに感謝の言葉を告げているのが印象的。また2名ともにあるスタッフの関与が心強いとの旨を述べている。それが工藤太郎氏である。藤岡氏は「自分の最高の相棒である工藤太郎氏が監修しているから、完璧なリメイクになったはず」とコメント。倉島氏もまた「工藤太郎さんがガチで監修しているので、当時のテイストがバッチリ再現されております」と語っている。

工藤太郎氏は、オリジナル版ではイベントデザインを担当したクリエイターだ。その後倉島氏らと『moon』の開発に関与しのちにパンプールを設立し社長などを務めた。『もぎたてチンクルのばら色ルッピーランド』ではディレクターを担当。現在はフリーランスで活躍している。工藤太郎氏は、倉島氏らと同様にラブデリック/バンプール系の道を進んだ一方で、『ペーパーマリオRPG』シリーズにもディレクターやイベント監修などとして深く関与。そして『スーパーマリオRPG』リメイク版でも、イベントディレクターや(テキスト)ライティングを担当している。エンドロールでも早期に登場しており、主要スタッフであることがうかがえる。


工藤氏はオリジナル版『スーパーマリオRPG』にも、それらのテイストを後継した『ペーパーマリオ』シリーズにも関わっている。リメイク版は、オリジナル表現は原則保たれているものの、現代でも理解しやすく親しみやすいアレンジがなされている。ビジュアルを刷新してもアイデンティティが保たれているのは、オリジナル版とリメイク版の両方を、あるいは昔と今を両方知る人物が関与していることも大きそうである。

伝説的な作品がリメイクされる際には、オリジナル版のスタッフから批判されるといったケースもある。本作においては、リメイクに参加しなかったオリジナル版スタッフにも祝福されており、恵まれたリメイクである。オリジナル版スタッフとリメイク版スタッフの、たゆまぬ努力によって成し遂げられたのだろう。


『スーパーマリオRPG』リメイク版は、Nintendo Switch向けに発売中だ。




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Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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