「『龍が如く7外伝』はシリーズ入門にぴったり」という公式発信をめぐってファンの間で議論白熱。賛も否も、どっちの意見もわかる

龍が如くスタジオの英語圏向けアカウントRGG Studioは11月23日、『龍が如く7外伝 名を消した男』がシリーズ入門者向けだという旨のポストを投稿。同ポストをめぐって議論が生まれている。

龍が如くスタジオの英語圏向けアカウントRGG Studioは11月23日、『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下、7外伝)がシリーズ入門者向けだという旨のポストを投稿。同ポストをめぐって議論が生まれている。どうやらユーザーによっては、思うところがあるようだ。


『7外伝』は『龍が如く』シリーズ新作だ。11月9日に発売され、対応プラットフォームはPC(Steam/Microsoft Store)およびPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S。同作では、『龍が如く6 命の詩。』にて姿を消した桐生一馬が、『龍が如く7 光と闇の行方』の時間軸中何をしていたかが描かれる。主人公は桐生一馬で、『6』まではおなじみだったアクションシステムが採用。蒼天堀の街を中心に、桐生がいかに『龍が如く7』の“あのシーン”に至ったかの過程が描かれる。

RGG Studioは11月23日に、海外メディアGame Rantのレビュー批評文を引用。「シリーズ経験者にとってはマストプレイであり、シリーズ入門者にとっても完璧な作品」という同メディアのテキストを貼りつつ、「友人や同僚や親戚に、『龍が如く7外伝』はシリーズ入門にぴったりであり、いま買えることを伝えて!」とフランクに呼びかけた。


一見するとごくごく普通の宣伝告知なのだが、ファンとしてはいろいろ意見があるようだ。『龍が如く』シリーズのファンアカウントYakuza Fanは「シリーズで本作以上にコンテクスト理解を要求する作品はないと思うんだけど」と投稿。ほかにも1500以上の反応がRGG Studioのツイートには寄せられており、その多くがツッコミを入れる内容となっている。ほかにも、「誤情報を広めないで」とミームに乗せて言われる始末。つまり、『7外伝』がシリーズ入門に完璧だと思わない、そう考えるユーザーが多いのだろう。


なぜ『7外伝』は入門向けではないと考えるのか。それは前述されたように、『7外伝』はなかなかハイコンテクストな要素があるからだ。そもそも設定として、『龍が如く6』から『龍が如く7』の間に桐生が何をしていたか問う内容で、その設定自体が前2作のプレイをふんわり要求するようなコンテクストがある。また物語の中では、過去作に出てきたキャラがさまざま登場。さながらちょっとした同窓会にもなっている。ストーリーに出てくる面々は新キャラも多いが、最終的には『龍が如く7』につながるということで重要なキャラは他シリーズ作品登場キャラも多い。前知識があればより楽しめるのは間違いないだろう。

一方で、入門者向けであるという考え方も理解できる。設定はハイコンテクストであるが、お話としては前知識は必須ではない。「今はヤクザではないヤクザっぽい人が、浄龍を名乗りながら、いろいろ巻き込まれる」ぐらいの温度感だ。また前述したように新キャラも多い。また桐生は例のごとく説明口調で状況を説明してくれるので、それとなく背景を教えてもくれる。今作の桐生の説明や演出などによって、むしろシリーズの背景情報がわかる側面もあるのだ。そして来年発売される『龍が如く8』を遊ぶにあたっては、本作がもっとも新作への流れが理解しやすいエントリー作でもあるといえる。

パブリッシャー的には、今シリーズが欧米圏で人気拡大中だからこそ、新たなユーザーを迎えたいはず。来年新作発売を控えているならなおさらだ。一方で、シリーズのことを知ってるシリーズファンなら、過去作品の情報を知らずにプレイするのは『7外伝』を楽しめないと思うだろう。シリーズ入門については『龍が如く0 誓いの場所』を推す声が多い。ゲーム内時系列的には『龍が如く』シリーズでもっと古い作品であり、完成度も高い。納得のチョイスである。


ただしこれから『龍が如く』シリーズに入門するとして、『0』から始めると到底新作に追いつけない。『龍が如く』シリーズは各作品15~30時間ほどのボリュームがある(7に至っては45~70時間)。それらをすべてプレイして新作に備えるのはかなり大変。「0から始めて」と言うのは、売り手側のすすめ方としては正しくもありつつ、判断が難しくもあるだろう。そういう意味では『7外伝』でシリーズの雰囲気をふんわりと理解してほしいと望むのは、合理的ではある。

こうした議論があるのは、『龍が如く』シリーズへの思い入れが強いプレイヤーが多いという証でもある。シリーズの要素を余すことなく楽しんでほしいので、『7外伝』ではなく『0』から遊んでほしいと願うのだろう。愛があるからこそ、入門作品についてはこだわるのである。一方でセガ側がそうしたハードルを取り去るために、販促として『7外伝』をプッシュするのも自然。どっちの意見も一理あるだろう。


『7外伝』はシリーズとしてはコンパクトな方で、10~20時間ほどでクリア可能。またシリーズの魅力をぎゅっと詰めたゲームである。同作を遊んでみて、シリーズが好きそうであれば、『0』から遊んでみるといいかもしれない。いずれにせよ、熱烈なファンを抱えていることがうかがい知れる一幕であった。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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