ゲームの祭典「The Game Awards 2023」の部門別ノミネート作品が発表された。その中で、インディーゲーム部門に『デイヴ・ザ・ダイバー』が名を連ねており、ツッコミが多数寄せられている。
「The Game Awards 2023」では、さまざまな部門が設けられている。そしてその部門からノミネートタイトルが絞られ、最終的に大賞が決められる。今年も恒例の部門である「BEST INDEPENDENT GAME」が設けられノミネート作品が公開された。ノミネートされたゲームは以下のとおり:
・『Cocoon』
・『デイヴ・ザ・ダイバー』
・『DREDGE』
・『Sea of Stars』
・『Viewfinder』
いずれの作品も今年発売され、高い評価を獲得した珠玉のゲーム。一方で、『デイヴ・ザ・ダイバー』はインディーゲーム部門に入るのはおかしいのではないかと指摘されている。特に強く指摘しているのは、個人ゲーム開発者Tyler Glaiel氏である。同氏は『The End Is Nigh』や『Closure』など、さまざまな小規模ゲームを作ってきた開発者。同氏は『デイヴ・ザ・ダイバー』を「インディーゲーム」に当てはめるのは無茶苦茶であるとコメント。今からでも(高評価アクションゲーム)『Pizza Tower』と交換すべきではと指摘した。同氏は以前から『デイヴ・ザ・ダイバー』をインディーゲームに当てはめるのはおかしいと度々意見しており、一貫性のある指摘である。
こうした指摘は、ほかのユーザーや開発者も思うところもあるようで、ゲーム司会者系インフルエンサーGreg Miller氏なども指摘。The Game Awardsの告知ポストには、コミュニティノートが付けられている。コミュニティノートが正しさそのものを必ずしも担保するわけではないが、少なくとも「役に立つ」と考えられているだろう。
ではなぜ『デイヴ・ザ・ダイバー』がインディーゲームとして適切ではないと思われるのか。それは同作が、大企業ネクソン内で作られたゲームだからである。ネクソンは、『メイプルストーリー』や『アラド戦記』などを運営しており、時価総額ベースで世界上位10位以内に入る大手ゲーム会社である。
『デイヴ・ザ・ダイバー』は、ネクソン内の小規模チームにより立ち上げられ、ミントロケットなるブランドにより発売された。巨大資本を擁するネクソンの社内小規模チームにより作られたゲームが、インディーゲームの枠に入れる作品として適切なのかという議論なわけだ。
重要なのは、ネクソンおよびミントロケット自身はインディーゲームあるいはインディーチームとは名乗っていない点。筆者は『デイヴ・ザ・ダイバー』のインタビューに参加し、ディレクターのファン・ジェホ氏から話を聞いたが、小規模チームで作ったといった話が出た際もインディーというワードを出さなかった。同氏はネクソン内部・ネクソンのチームで作ったことを強調していた。最近よくある“大企業が内部小規模チームをインディーと呼ぶ”パターンには該当していない印象だ。
もともとインディーゲームという呼称は、その定義の曖昧さから議論になりやすい。「どこから、どこまでがインディーか」「これはインディーと呼ぶにふさわしいか」といった議論は度々発生する。非常に定義が曖昧なのだ。しかしながら、インディーゲームと呼ばれる作品の共通点として、「大きな資本のバックアップがない」といった点は、よくあげられる。開発環境や資金面で安定性がある程度担保された上で作られたゲームは、“インディーっぽくない”という意見だろう。この意見が妥当かどうかもまた三者三様であるが、少なくとも今回のノミネートにおいて、そうした点が議論のポイントのひとつになっているようである。
ちなみにThe Game Awardsのノミネートは、世界各国の100以上のメディアやインフルエンサーを含んだ選ばれた審査員によって決められるという。2021年や2022年は『Kena: Bridge of Spirit』や『Stray』、『Cult of the Lamb』といったタイトルがノミネートされていた。中には資金面が潤沢なパブリッシャーをバックにつけているゲームタイトルもあるので、これらを含めて「インディーゲームかどうか」に当てはめていくと答えを出すのが難しい。ただし今回は、『デイヴ・ザ・ダイバー』がネクソン内部チーム開発というわかりやすい立ち位置にあることから、指摘されたのだと思われる。
今回の議論は国内外で巻き起こっており、さまざまな論説があげられている。『デイヴ・ザ・ダイバー』がノミネートされていることにより、ほかの優れたインディーゲームのノミネート席が消えたという考え方もできるので、個人開発者あるいは小規模チームが深刻に考えることも理解できる。世界中の声を聞きながら運営していることを強調するThe Game Awardsの主催人Geoff Keighley氏は、こうした声にどのように対応するのだろうか。
※ The English version of this article is available here