ゲーム開発者のJoe Henson氏は10月31日、同氏が開発に携わる『DON’T SCREAM』の初日販売本数が4万本に達したことを報告した。これにあわせて、同作の早期アクセス配信開始までの制作背景および同氏の行ったマーケティング戦略が投稿されている。
『DON’T SCREAM』は、デベロッパーJoure & Joeが日本時間10月28日に配信開始した、マイク必須の一人称視点ホラーゲームだ。プレイヤーは、薄暗い森のなかを18分間歩き続けることが目標となる。ゲーム内時間の18分はプレイヤーの移動中にのみ進行するため、その場にとどまり続けることはできない。強制的に不気味な森を探索することとなり、その道中にはホラー演出も登場する。このとき、プレイヤーが悲鳴や吐息などを漏らしマイクに感知されるとその時点でリスタートとなってしまう。本作は早期アクセス配信開始以降、多くのストリーマーにより実況プレイが配信されている。
今回本作の販売本数を報告したのは、本作の開発者の1人であるJoe Henson氏。同氏はインディーズゲームのマーケティングおよびPRコンサルタントにも携わる人物だ。今回同氏がXにて投稿したポストによれば、本作の開発期間は5か月。注目を集めやすい単純明快な要素をもち「ハロウィン」にぴったりな作品をコンセプトとして開発が進められたとのこと。同ポスト内では、配信開始2週間前におこなったゲームの発表以降、13万件のウィッシュリスト登録を獲得し、配信開始後24時間のうちに4万本を売り上げたことが報告されている。
Joe氏によれば、本作の開発にあたってまずはゲームのタイトル内に、作品固有のセールスポイントあるいはゲームシステムを含め、特定層のユーザーを誘引することを念頭に置いたという。本作であれば『DON’T SCREAM(叫ぶな)』のタイトルで示唆されるホラー要素、マイクによる音声検出システムがそれにあたるだろう。同氏は、ゲームにマイクを使用するという仕組みから、自ずとストリーマー(配信者)たちを惹きつけ、家族友人間の交流においても活躍することを見込んでいたそうだ。本作早期アクセス配信開始以降のTwitchにおける総視聴者数を確認すると、連日ピーク時には数万人の視聴者数を獲得しており、ハロウィン当日となる10月31日には、最大視聴者数8万9690人を記録している(SteamDB)。
また、Joe氏は本作の販売戦略として情報公開や配信開始のタイミングにも注意を払ったという。本作のゲームプレイトレーラー、Steamストアページなどが公開されたのは10月13日(金)。多くの人がホラー映画を彷彿とするであろう「13日の金曜日」を狙ったというわけだ。公開されたトレーラーは、同氏の狙い通りに各種SNSで瞬く間に広まることとなった。さらに、配信開始日を現地時間10月27日としたのも販売戦略にもとづいた選択だという。その日は、ハロウィンを直前に控えた金曜日であり、同氏はストリーマーたちが週末のハロウィン配信に備えてホラーゲームを探すことを見越していたのだ。また、10月31日のハロウィンに先がけて配信開始しておくことで、ハロウィン当日の盛り上がりを確実なものとする意図もあったとのこと。
Joe氏はこうした戦略のもと、事前に大々的なプロモーションを必要とせず、ゲームの内容/タイトルそのものがゲームのマーケッターとなる(売り込んでいく)ような作品を目標に掲げ、本作の開発をおこなったとしている。また、本作はゲームの完成後にマーケティングを考えたのではなく、ゲームデザインのなかにマーケティングのビジョンを組み込んだ、とも表現している。
一連のポストのおまけとして同氏は、『DON’T SCREAM』のウィッシュリスト登録者数が10万人に到達した際に、Steamの運営元であるValveから同作のポップアップ広告掲載の可能性を示唆するメールを受け取り、その後広告掲載が実現したことを報告している。また、ハロウィンの時期に限ってはクオリティが一流でなくともホラーゲームが売れる可能性に言及。関連して、ゲームマーケティングコンサルタントのChris Zukowski氏によるブログ記事「インディーデベロッパーがホラーゲームを1本は作るべき14の理由」を引用し、共有した情報がほかのゲーム開発者の役に立てば幸いとして、ポストを締めくくっている。同記事では、Chris氏が独自におこなった調査データをもとに、Steamストアでもっとも人気のあるジャンルはホラーゲームである、など興味深い報告がなされている。気になった方は一読してみるとよいだろう。
『DON’T SCREAM』はPC(Steam)向けに、早期アクセスを配信中。現在リリース記念セール中で、11月4日まで10%オフの1080円で購入可能だ。なお、現在のSteamレビューステータスは好評率65%の「賛否両論」となっている。