個人開発者Lucas Pope氏は10月19日、『Return of the Obra Dinn』のPC版発売5周年を記念して、開発秘話を明かした。その中で、ヒントシステムの導入を検討し、断念していたことを明らかにした。
『Return of the Obra Dinn』は、一人称視点で展開される3Dアドベンチャーゲーム。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS4/Xbox One/Nintendo Switch。主人公となるのは、東インド会社のロンドン事務所の保険調査員。1807年の10月14日、5年前に51人の船員と共に消えた大型商船Obra Dinnが、イギリスのファルマスにて発見されたというニュースを聞くところから物語が始まる。ファルマスにて不思議な姿で発見された船に乗り込み被害状況を調査。その中で、Obra Dinn号で何が起こったのかを知っていくことになる。
本作の特徴は、難易度の高い推理システムにある。それぞれの船員が「死んだ瞬間」を見ながら、船員の名前や死因などを推理しなければならない。名前がそのままわかるケースはほとんどなく、服装や死んだ時の状況を細かく観察し、身元を割り出していく。その現場以外の場面や音、そして小さな変化も推理のヒントになる。そうして、船員の身元を割り出していくのだ。本作は、その難易度の高さだけでなく、いろんなヒントが散りばめられた設計など、「死の瞬間を切り取る」独自のゲームとして、さまざまなアワードに輝いた。
一方で『Return of the Obra Dinn』は、ゲーム内に直接ヒントがないのも特徴。この点について、Pope氏はヒントの導入も検討していたようだ。5周年に際して未使用資料を公開しており、その中で「リンゴ」「ミミズ」「葉っぱ」などのヒントアイコンの存在を明らかにしている。ゲーム内の本の中で、これらのアイコンを使ったヒントシステムを入れようとしていたが、断念したようだ。Pope氏は細かいことは覚えていないとしつつ、ゲームとしていい比喩にならなかったと振り返っている。一方で、ミミズアイコンのヒントは、ほぼ機能していたとのこと。どういうヒント機能かわからないものの、リンゴやミミズや葉っぱといった要素から考えると、虫食いなどを使ったギミックだったのかもしれない。
ちなみにPope氏は弊誌インタビューにおいては「ゲーム内に直接的なヒントがない」という問いかけに対して、推理を進めれば進めるほど必然的に選択肢が絞られていく構造を盛り込んでいることを説明したほか、開発終盤はPope氏自身が疲れてしまったので、手がかりを調整しないことにしたと明かしていた(関連記事)。
ヒントがあれば、より“総当り”になる人が減っていたと見込まれる一方で、今のような難しい推理をやりとげる達成感はなかったのかもしれない。いずれにせよ、同作はSteamで好評率96%に「圧倒的な好評」を得たゲームになったというのが唯一の事実だ。ただ、本作に直接的なヒントシステムが用意されたとすれば、どのような内容になり、ゲーム体験にどれほど影響を及ぼしていたのか、気になるところである。
『Return of the Obra Dinn』はPC(Steam)/PS4/Xbox One/Nintendo Switch向けに発売中。Pope氏は近年はPlaydate向けの小規模作品をリリースしているほか、現在は新作を開発中である。