アメリカ・カルフォルニアを拠点に構えるAscendant StudiosのCEO・Bret Robbins氏は9月15日、スタッフの45%がスタジオを離れることになったと報告した。先立ってPolygonにてレイオフ報道があり、その内容を認めるかたち。同スタジオのデビュー作である『アヴェウムの騎士団』の売上が芳しくなく、その影響を受けているようだ。
Ascendant Studiosは、Robbins氏がSledgehammer Gamesにて『Call of Duty: WWII』にてクリエイティブディレクターを務めたのち、2018年に設立された。その後Telltale Gamesのスタッフらが多く合流し、100人の規模のスタジオとなった。同スタジオはElectronic Artsと共にEA Originalsレーベルにて8月22日に『アヴェウムの騎士団』を発売した。
『アヴェウムの騎士団』はシングルプレイ向け魔法FPSとして開発。魔法が存在する世界アヴェウムを舞台に、三色の魔法を扱える新米バトルメイジ「ジャック」として戦争に巻き込まれていく。Unreal Engine 5が採用されており、PS5/Xbox Series X|S/PC向けの次世代ハイスピード型のファンタジーFPSとして打ち出されていた。しかし同作の売上は苦しかったようだ。
同作の本稿執筆時点でのSteamユーザーレビューの評価ステータスは好評率72%の「やや好評」、レビュー集積サイトMetacriticのメタスコアは70(ユーザースコアは5.5)と渋め。映像表現や魔法をまじえたゲームプレイは高い評価を獲得しているものの、ストーリー面などは不評。昨今リッチなゲームが生まれる中、個性の打ち出しにもやや苦心していた。Polygonが内部関係者に取材したところによると、本作はEA Originalsにてもっとも売上の低いゲームになっているという。
そうした影響もあり、スタッフの45%がレイオフされたとのこと。40人ほどの従業員がスタジオを離れることとなった。Robbins氏はレイオフ報告にて、この決断は決して簡単ではなかったとコメント。『アヴェウムの騎士団』が発売されたことにより、(人件費の)調整をすることになったと経緯を説明。各スタッフのパッケージ(特別退職金)や転職については支援するとし、UE5に優れたアーティストやエンジニアを求めるスタジオは、連絡をしてほしいと呼びかけている。
一方でRobbins氏は、『アヴェウムの騎士団』について誇りに思うとコメント。インディペントな開発チームとして、AAAスタジオを作り、新テクノロジーで新規IPを作れたことについては、業界で非常に珍しいことであるとして、胸を張るとした。また『アヴェウムの騎士団』のサポートは今後も続けていくとも表明している。
Ascendant Studiosは前述したように、新興スタジオである。ここ数年で一気にスタジオ規模を拡大し『アヴェウムの騎士団』を作り上げた。売上の影響だけでなく、急速拡大の副作用として、次のプロジェクトが固まるまでは、スタジオの経営としてもある程度身持ち軽くしておく必要もあるのだろう。ゲーム発売の喜びと、スタッフ半数をレイオフする 苦渋の決断の両方を経験したAscendant Studiosの今後に期待したい。