Steamにて「ChatGPT対応ゲームが配信拒否された」と、とあるインディー開発者が報告。ChatGPTは対応だけで生成コンテンツはゲーム内になかったものの


あるインディーゲーム開発者が、3年半かけて制作した作品のSteamでの配信について、Valveから拒否されたと報告。生成AIであるChatGPTへの対応を作品に組み込んだことが理由とみられ、大きな注目を集めている。

インディー開発者のTomas Piga氏は7月13日、自身の作品である『Heard of the Story?』のSteamでの早期アクセス配信を、8月17日に開始すると発表。ただ当日になっても配信開始されず、当時同氏はデベロッパー側としては準備できているものの、Steamを運営するValveによる承認を待っている状態だと報告していた。そして9月2日になって、Valveから配信を拒否されたという。

『Heard of the Story?』は、中世の世界を舞台にする都市建設シミュレーションゲーム。資源を集め、小さな村や城下町などを作ることができ、そのなかでは村人たちと協力することになる。自動生成にて生み出される村人たちは、それぞれが個性と思考、ニーズ、知識、感情をもち、周囲との交流を重ねるなかで成長。町にて思い思いの生活をする彼らをプレイヤーは助け、時に助けられながら、町を発展させていく。

Piga氏は、本作の開発にはこれまでに3年半を費やしたという。この間にはKickstarterでの資金調達にも挑戦し、目標金額に届かず失敗してしまうも、ようやくリリースできる段階にまで来た。しかしSteamでの配信について拒否されてしまい、そのValveの対応について同氏は不公平であると述べ、不満をあらわにしている。

Piga氏によると、今から約1か月前に『Heard of the Story?』の審査をValveに申し込み、その後Valveは追加的な審査が必要であるとし、本作におけるAIに関する説明を求めてきたとのこと。本作には、村人のセリフに生成AIであるChatGPTを用いることができるオプションが用意されていたため、懸念が示されたものと考えられる。

Valveはこれまでに、生成AIが用いられた作品のSteamでの配信を拒否したことがある。同社は、AIが生成したコンテンツをSteamを通じて配信すること自体を妨げる意図はなく、生成されたコンテンツの権利を開発者が有しているかどうかが問題だと説明している(IGN)。生成AIの開発においては、小説やイラスト、写真などを権利者に無断で収集し学習させていると指摘され、一部では訴訟にも発展している。各国での法的な整備もまだ不十分。現時点では、そうした技術を用いると著作権侵害に繋がる可能性を否定できないため、ValveとしてはSteamでの配信を認めることができないのだろう。

ただ、『Heard of the Story?』にはChatGPTを利用した生成要素自体は実装されておらず、ユーザーが自身で“ChatGPT Mod”を導入する際にサポートするオプションを用意しただけだったという。Piga氏は、本作自体にはAIによって生成されるコンテンツが含まれないことをValveに説明し、念のため同オプションを削除したビルドも用意していたが、一方的に配信拒否と再申請不可を通告されたそうだ。

Piga氏は、今回の経緯をRedditにも投稿。多数のユーザーから作品申請についてのアドバイスが寄せられ、また生成AIの扱いなどについて議論が巻き起こることとなった。Piga氏は、Valveの一方的な対応は不公平で馬鹿げていると不満を述べつつ、同社の考えを変えさせられる可能性は低そうだと諦めのコメントをしている。

また本作の開発中には、先人の教えに従って本作の公式サイトを開設せず、すべてのファンをSteamのストアページに誘導しウィッシュリスト登録を促してきたが、それもすべて無に帰してしまったと落胆。ほかのインディー開発者に対して、ファンを獲得するための主要プラットフォームとしてSteamを利用することは避けるべきだと呼びかけた。

なお『Heard of the Story?』の今後については、Epic Gamesストアやitch.ioでのリリースを目指すとのことだ。