突然配信停止された高評価メトロイドヴァニア『Vigil』開発元、“中国を刺激しかねないアップデート名称”をきっかけに、販売元と係争中であると明かす


台湾のデベロッパーGlass Heart Gamesが手がけたアクションゲーム『Vigil: The Longest Night』が、先月7月に一部地域を除き突如配信停止となった。この件について同スタジオは8月10日、弊誌の問い合わせへの返信の中で声明を発表。またSNS上にもほぼ同内容の声明を投稿し、本作が配信停止となった背景を説明した。

『Vigil: The Longest Night』は、狂気の闇に包まれた世界を舞台にする2Dアクションゲームだ。『悪魔城ドラキュラ』や『Salt and Sanctuary』から影響を受けていることが公言されており、また「クトゥルフ神話」で知られる作家H.P.ラヴクラフト風の散文や、開発元の拠点である台湾の文化、そして中国の剪紙から影響を受けたアートを融合させた世界観が特徴である。

本作では、夜警と呼ばれる任務に就く主人公レイラが、地域にはびこる悪魔のような生物から故郷を守るため、夜が明けることのない世界で戦う。洞窟や廃村、森などのエリアがある広大なマップを探索しながら、強力な敵に立ち向かうのだ。本作は、歯ごたえある戦闘や探索要素、そしてダークな世界観などが評価され、Steamのユーザーレビューでは現時点で「非常に好評」ステータスを獲得している。

本作は2020年10月にPC/Nintendo Switch向けに配信開始され、上述したように高い評価を獲得。しかし先日7月27日に突如配信停止となり、日本版を含め各プラットフォームのストアから姿を消した(関連記事)。なぜ配信停止されたのか開発元や販売元からは説明がなく、ユーザーは困惑することとなった。そしてこのたび開発元Glass Heart Gamesが声明を発表した。

声明にてGlass Heart Gamesは、『Vigil: The Longest Night』の配信停止は同スタジオの判断でおこなったことではなく、予想外の出来事だとコメント。本作の各プラットフォームでの販売権はパブリッシャーNeon Doctrineが保有しているものの、これまでに何も説明を受けていないとした。そのうえで、Neon Doctrineとは現在係争中であると明かし、その経緯を説明している。

本作では、2021年8月に「ASOMROF」アップデートが配信されるも、その後すぐに取り下げられた。同アップデートの名称についてNeon Doctrineが、台湾を表す言葉「FORMOSA」を逆から読んだものであり、特に中国国内において政治的な一線を越えるものと受け止められる可能性があると指摘したという。そして同社は、本作が中国の規制に抵触する恐れのあるコンテンツを含むとSteamに報告。中国国内では、その時点で本作の配信が停止されたとのこと。

「ASOMROF」アップデートは、台湾に実在する史跡・安平古堡をモチーフに、台湾の文化を作中に取り込みユニークなゲーム体験を提供する内容だったという。Glass Heart Gamesは、同アップデートについてはNeon Doctrineと販売契約を結ぶ以前、2018年に実施したクラウドファンディング時にすでに発表しており、その内容について当時広く報じられていたことは同社も承知していたはずだと主張している。


ただ声明によると、その後Neon Doctrineは本作からの収益の大部分について、Glass Heart Gamesへ予告なしに送金を停止。さらに、同スタジオが本作のアップデートをおこなうためのバックエンドへのアクセスも遮断されたという。こうした対応についてNeon Doctrine側からは、合理的な説明や補償はなかったとのこと。また、この間に中国国内では、本作のゲームキーの不正販売が横行することとなったそうだ。

こうしたことを受けて、Glass Heart GamesはNeon Doctrineを相手取り2021年10月14日に提訴。結果的にGlass Heart Games側の勝訴となり、両社の契約解除と本作の販売権の返還が認められるが、現在控訴されている状況にあるとのこと。そのなかで、今回の突然の配信停止が発生したそうだ。

Glass Heart Gamesは、このたび出した声明が進行中の訴訟に影響する可能性があるとコメント。しかし、ゲームにおける誠実さや創造性は、政治的な相違やつまらないナショナリズムを超越したものでなければならないとし、自らの信念を貫くとした。


Glass Heart Gamesは弊誌の問い合わせに対し、『Vigil: The Longest Night』が配信停止されてからこれまで、いま何ができるのかスタジオ内で議論を重ねてきたと述べる。そして、声を上げる最後の機会として声明を出すことにしたそうだ。その声明によれば、本作の突然の配信停止は、中国を刺激しかねないと指摘されたアップデートの名称に端を発し、開発元と販売元の間での訴訟にまで発展する複雑な状況のなかで、販売元の手によっておこなわれたようだ。Glass Heart Gamesは、本作をいつか配信再開したいとの希望を述べているが、両社の契約解除を認めた判決に対して控訴されているとのことで、当面はその行方を見守るほかないのかもしれない。なお弊誌では、今回の声明に対する受け止めなどについてNeon Doctrineに問い合わせているところだ。