Steamの「ウィッシュリスト上位」リストにおいて、メーカーごとに何本のタイトルをランクインさせているのかを示すデータが注目を集めている。多くても20本前後というメーカーが並ぶなか、パブリッシャーのPlayWayだけ70本を超え突出しているのだ。
ただし注目されているのはその数字自体ではなく、なぜそれほどの数のタイトルを送り出せるのかというところ。この点に関して、あるゲーム開発者が「(発表済みで未発売の)PlayWayタイトルの半分以上は存在しない」と発言し議論を呼んでいる。
Steamでは、ユーザーによるウィッシュリスト登録数の多いタイトルが「ウィッシュリスト上位」として公開されている。そしてSteamの非公式データベースサイトGames-popularity.comは、メーカーごとに何本のタイトルを同リストに送り込んでいるのかをランキング化し公開している。そこでダントツ1位となっているのがPlayWayだ。現時点で72本の同社タイトルがウィッシュリスト上位にリストアップされている。
『NeuroVoider』や『ScourgeBringer』などで知られるデベロッパーFlying Oak GamesのCEO Thomas Altenburger氏は7月29日、このランキングを引用しながら、「PlayWayタイトルの半分以上は存在しない」とSNSに投稿。PlayWayは、フェイクのゲームプレイトレイラーをもってSteamストアページを開設し、その映像が人々の興味を引いたならスタジオを雇って開発を始め、興味が示されなければそのままキャンセルするビジネスモデルを採用していると指摘した。
つまり、PlayWayはSteamを使って一種の市場調査をおこなっており、そのためにコンセプト段階でストアページを開設することを繰り返しているからこそ、上述したランキングのような結果に結びつくというのだ。
PlayWayはポーランドに拠点を置くパブリッシャーで、Steamではこれまでに約200本のタイトルを販売。代表的な作品としては、『House Flipper』や『Thief Simulator』『UBOAT』『Cooking Simulator』『Mr Prepper』『Bum Simulator』『Car Mechanic Simulator』シリーズなどが挙げられる。プレイしたことがある、あるいは聞いたことのあるタイトルがあるという方も多いのではないだろうか。
同社は新作の発表ペースが速く、一方で現時点で未発売タイトルは100本を超える。新作を発表する際には発売時期を未定とすることがほとんどで、公開されるトレイラーは実際のゲームプレイではなさそうなものが多いことが特徴的だ。またSteamストアページに掲載されるスクリーンショットは、そのために撮影されたものではなく、トレイラーから切り出したものが掲載される場合が多い。こうした状況からすると、コンセプト段階で公開しているという指摘には頷ける部分がある。
実際のところ、PlayWayが指摘されたようなビジネスモデルを採用していることは事実のようだ。同社CEOのKrzysztof Kostowski氏がかつて海外メディアPCGamesNのインタビューに答え、その手法について詳しく語っている。
Kostowski氏によると、PlayWayはお抱えのデベロッパーが集まる非公開のDiscordサーバーを運用しており、そこにはさまざまなゲームの企画が寄せられるという。そうした企画は、10人の開発者が承認するとプリプロダンクション段階へと進められ、プリレンダリングのトレイラーが制作。それがSteamのストアページやYouTube/Facebook向け広告に掲載されるとのこと。異なる作品でも、どこか似たような見た目をしている映像が多いのは、PlayWayの過去作の技術を流用しているためだそうだ。
その後、同社はSteamウィッシュリストの登録状況をモニタリングし、またSteam掲示板やYouTubeなどでゲーマーからどのような反応・要望が寄せられているのかをチェック。その結果によって、リリースに向けた開発段階へと進行するタイトルもあれば、ボツになるタイトルもあるとのこと。
こうしたPlayWayのビジネスモデルについては、合理的であるとか、他業種でもおこなわれていることだといった意見が寄せられている。同社が販売したタイトルは、必ずしも人気作となるものばかりではないが、先に挙げたように結果を出したタイトルは数多い。一方で、まだ開発が決定していない作品のストアページを公開し、市場調査的にSteamを利用することを、Valveは認めているのかと疑問を示す声も聞かれる。
後者の意見についてKostowski氏は、Steamに掲載した作品は必ず完成させなければならないといった明確なルールは設けられていないとし、自社の利用方法は問題ないとの認識を示している。PlayWayは長年Steamを中心に活動し、このインタビュー公開後もお咎めなしということは、結局のところValveも容認あるいは黙認しているのかもしれない。またKostowski氏によると、発売の見込みがないタイトルのストアページを削除するようValveに申し入れたところ、そうした対応は望まないといった趣旨の回答があり、そのまま放置されているそうだ。
先のSNS投稿に話を戻すと、Kostowski氏はPlayWayがこの2年間に発売したタイトルのリストを、投稿者のAltenburger氏に宛てて返信している。そこには85タイトルが掲載されており、「PlayWayタイトルの半分以上は存在しない」という指摘に対して、数多くの作品がリリースに至っていると反論する意図がある模様。
リリースされるかどうかはSteamユーザーなどの反響次第ということのため、“半分以上は存在しない”ことになるかどうかも反響次第であり、いまひとつ根拠に欠けた指摘ではあるだろう。Kostowski氏によると、今では人気タイトルに数えられる『UBOAT』や『Mr Prepper』では、当初の想定よりもさらに長い期間にわたり様子を見て、最終的に発売にまで至ったそうだ。
こうしたビジネスモデルに対しては、さまざまな意見があるかもしれない。ともあれユーザー側としては、PlayWayが新作を発表した際には、それはまだ発売が決定しているわけではないと受け止める必要がある。そして、リリースが実現してほしい作品には、ウィッシュリスト登録によって意思表明することが大事。また発表済み作品においては、ストアページに開発状況が投稿されているかや、体験版(最近ではプロローグ版として別途配信されることもある)が配信されているかといった、リリースに向けた進捗がみられるか確認すると良いだろう。