『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』PC版、低速HDDでは“ワープシーン”だけ異常にカクカクに。改めてPS4発売が難しかったことが証明される

 

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは7月27日、『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』のPC(Steam/Epic Gamesストア)版を配信開始した。

本作は、2021年6月にPS5版が先行して発売されており、当時開発元は、本作の次元を股にかける要素はPS5に搭載されたSSDでなければ実現不可能だと述べていた。ただ、PC版の最低動作環境にはHDDが挙げられており、一部で議論を呼んでいた。このたびPC版の発売を迎えたことで、その点についてさっそく検証がおこなわれている。

『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』は、SIE傘下のInsomniac Gamesが手がけたアクションゲーム『ラチェット&クランク』シリーズの最新作だ。PC展開は同シリーズとしては初のことで、同じくSIE傘下のNixxes Softwareが移植開発を担当した。

本作では、邪悪なドクター・ネファリウスが“自分が絶対に勝つ世界”へ移動しようと異次元への扉を開いたことで、シリーズお馴染みの主人公ラチェットとクランクが別々の次元へと送られてしまう。そして、ふたりは合流することを目指しさまざまな惑星を探索。そのなかでは、ラチェットと同じロンバックス族である新キャラクターのリベットが登場し、彼女もまたプレイアブルとなる。

PC版においては、フレームレート上限の解放や、ウルトラワイドモニター解像度への対応がおこなわれ、またNVIDIA DLSS 3・AMD FSR 2・Intel XeSSといったいわゆる超解像技術や、DirectStorage 1.2によるGPUでのデータ解凍処理へのサポートも導入されている。


本作のゲームプレイ上の特徴のひとつとして、次元の裂け目がステージ内に現れ、ラチェットがそこに飛び込むと一瞬にして別の世界へとワープすることが挙げられる。まったく異なるステージ環境を超高速でローディングしていることがうかがえ、PS5版が発売された当時には、PS5搭載環境のSSDでなければ同要素は実現できなかっただろうとアピールされた。

一方で、PC版の最低動作環境のストレージの項目では、SSDを推奨してはいるが、HDDでプレイ可能であると記載されている。そのため、「HDDでプレイできるなら、SSDでなければ実現不可能としたあの言葉は何だったのか」と、一部海外メディアやゲーマーなどから指摘されることとなった。

そしてついにPC版が発売されたことを受けて、ゲームの技術解析で知られる海外メディアDigital Foundryが本作の検証を実施。そのなかで、本作をHDDにインストールして動作させた映像も公開された。

投稿された映像は、最低動作環境に近いスペックのPCが用意され、PS4本体内蔵のHDDを流用して検証されたものとなっている。映像では、ラチェットが次元の裂け目に飛び込むと、かなり大きなカクツキが発生しながらワープ空間を漂い、およそ1分後に次のステージに到着した。ちなみにPS5版や推奨動作環境のPC版では、わずか1秒程度で過ぎ去るシーンである。

なお、使用されたPS4内蔵HDDは5400rpmのノートPC向けであり、データ転送速度が比較的低速なスペック。Digital Foundryは、最近の7200rpmのデスクトップPC向けHDDであれば、ずっと高速であり本作のプレイにおいてまずまずの動作(works OK)が見込めると補足している。もちろんSSDには及ばないだろうが、HDDでプレイする場合は、そのスペックによってゲーム体験が大きく変わるということのようだ。

なお、あえてPS4内蔵HDDを使って検証された背景には、PS5とPS4向けに同時展開されるゲームがまだまだ存在することがある模様。Digital Foundryは、そうした作品の開発者はいまだに古い低速HDDへの対応が求められると指摘している。裏を返せば、『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』のようなゲームデザインの作品は、PS4向けとして実現させることは難しいといえそうだ。先述したInsomniac Gamesのコメントも、PS4を念頭に置いたものだったとするなら納得できる話。同スタジオのコミュニティディレクターを務めるJames Stevenson氏はこの検証動画を引用し、「伝えた通りです(As we said)」とTwitter上で言及している。

*上の検証映像内での最低動作環境PCではSATA SSDを使用。ワープシーンでは、より高速なNVMe SSDとの違いを確認できる。

『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5向けに発売中だ。