ゲームキューブ/Wiiエミュレーター「Dolphin」Steamでの配信を断念。「任天堂との合意締結」を配信条件とされ、不可能と判断

 

ニンテンドー ゲームキューブ/Wiiエミュレーター「Dolphin」の開発チームは7月20日、同エミュレーターのSteamでの配信を断念すると発表した。同エミュレーターについては今年3月、Steamを通じた配信計画について発表されるも、配信開始されないまま5月になってストアページが削除されていた。

「Dolphin」は、ニンテンドー ゲームキューブとWii向けの対応ゲームを、PCなどで動作させるエミュレーターだ。ゲームキューブ対応のフリーウェアとして2003年から提供が開始され、その後Wiiへの対応やオープンソース化が実施。現在もコミュニティによって開発が続けられている、長い歴史をもつエミュレーターである。

Dolphinは公式サイトを通じて入手可能であるが、開発チームは今年3月、Steam Deckへの最適化などをおこなうためとして、Steamでの早期アクセス配信を実施する計画を発表。あわせてストアページも公開されたものの、Steamを運営するValveは5月27日、同ストアページを削除した。当時開発チームは、任天堂がデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づき配信差し止めを求めたためであると説明し、問題が解決されるまでSteamでのリリースを無期限延期にするとしていた(関連記事)。


それから約2か月が経った7月20日、Dolphinの開発チームはSteamでの配信を断念することを明らかにした。発表の中では、Dolphinのソースコード内に含まれていると指摘されていた、任天堂が手がけたWii向けゲームデータの共通鍵暗号に関する、米国での法的な解釈について詳細に綴られている。結論からいうと、開発チームは共通鍵暗号の存在は問題とはならないものの、一方でValveの要求を満たすことは困難だと判断したとのこと。

発表によると、任天堂からは実際にはDMCAに基づく正式な申し立てはおこなわれておらず、Valveの法務部門がDolphinのSteamでの配信について任天堂に伺いを立て、任天堂がDMCAを根拠のひとつとして配信しないようValveに求めたのだという。そのうえでValveは開発チームに対し、DolphinをSteamで配信するのであれば、任天堂と合意を結ぶ必要があると伝えてきたそうだ。

開発チームは、Steamにて何をどう取り扱うのかは最終的にはValve次第であり、また任天堂のエミュレーターに対するこれまでのスタンス(海賊版利用への懸念)からすると合意を結ぶことは不可能であるとコメント。両社の考えを変えさせることはできないだろうとし、SteamでのDolphinの配信を断念するとした。一方で、Steam版向けに予定していた開発は継続するとのことだ。

なお、先述した共通鍵暗号に関して任天堂はValveに対し、Dolphinの使用は技術的保護を不法に迂回する行為に繋がると指摘していたという。ただ開発チームは、米国の著作権法に照らして規定の適用除外が認められると主張。今後もDolphinから共通鍵暗号を削除することはしない方針を示している。