ゲームクリエイター中裕司被告に有罪判決が下る。スクエニ新作を巡るインサイダー取引事件での金融商品取引法違反罪について

 

東京地方裁判所にて7月7日、スクウェア・エニックスのゲーム開発をめぐるインサイダー取引事件に関して、金融商品取引法違反罪に問われていた中裕司被告に有罪判決が下った。東京地裁は中被告に対し、懲役2年6か月と執行猶予4年、罰金200万円、そして追徴金1億7000万円余りを言い渡したとのこと。TBSテレビ時事ドットコムなどが報じている。

中裕司被告は、1984年にセガに入社し『ファンタシースター』や『スペースハリアー』など多くの作品携わった経歴をもつゲームクリエイター。代表作としては『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズなどが挙げられる。その後同被告はセガを退社し自身の会社プロペを設立。そして2018年1月にスクウェア・エニックスに入社し、『バランワンダーワールド』を手がけたのち、2021年7月に同社を退社している。

東京地検特捜部は、2022年11月18日に金融商品取引法違反の疑いで中被告を逮捕。容疑は、スクウェア・エニックスに在籍していた2020年1月下旬、スクウェア・エニックスがAimingと共に『ドラゴンクエストタクト』を開発していることを知った中被告は、その情報が発表される前に、Aimingの株式約1万株を約280万円で買い付けたというものだった。また同年12月7日には、中被告はスクウェア・エニックスとエイチームのモバイル向け新作ゲーム(『ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー』とみられる)開発についての未公開情報を知り、2021年1月下旬~2月下旬ごろ、エイチームの株計約12万株を計約1億4470万円で買い付けた疑いがもたれ再逮捕された。


これまでの裁判にて検察は、「別の大手ゲームメーカーで、ゲームプログラマーとして世界的に著名なゲームの開発を手がけた実績を買われて、シニアマネージャーに就任した。その権限で、投資会議の資料や議事録が掲載されたサイトにアクセスして『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジーシリーズ』の新作の共同開発を進めることを知り、合わせて13万株を買い付け2000万円余りの売却益を得た」と指摘。これに対し中被告は「間違いありません」と述べ、起訴内容を認めていた(関連記事)。

また、先月おこなわれた論告求刑公判にて検察側は、中被告について「一般の投資家より格段に有利な立場で不正な利益を得て、市場の公正性を損なった」とし、懲役2年6か月、罰金250万円、追徴金1億7000万円あまりを求刑。一方で弁護側は、「積極的にインサイダー情報を閲覧したわけではない」として、執行猶予付きの判決と罰金と追徴金の減額を求めていたとのこと。

そして本日の判決にて東京地裁の蛭田裁判官は、「(スクウェア・エニックスから)重要な役割を期待され、進行中のゲーム開発に関する情報にアクセスできる権限を与えられていた」と指摘し、また「積極的に資料を閲覧しており、刑事責任を軽くみることはできない」と述べた。そのうえで、起訴内容を認め反省の態度を示していることから、執行猶予が相当と判断し、中被告に対し懲役2年6か月と執行猶予4年、罰金200万円、追徴金1億7000万円余りの有罪判決を言い渡した。なお、中被告側の判決への受け止めや、今後控訴するのかどうかについては現時点で明らかになっていない。