とある中小ゲームスタジオ社長、“新卒内定者に全員辞退され”深く悲しむ。しかし悪いことばかりではない
ゲーム会社Indie-us Gamesの代表取締役である中村匡彦氏はTwitterにて、新卒内定者全員に辞退されたとこぼし、反響を呼んでいる。同社にとってはなかなか苦しいニュースであったが、必ずしも悪いことばかりではないようだ。
Indie-us Gamesは、ゲームを中心に制作する会社だ。Unreal Engineを専門に扱っており、大規模ゲーム制作、アセットコンテンツ制作、学生支援など多岐にわたる事業に取り組んでいる。公開実績としては、バンダイナムコエンターテインメントから発売されている『SCARLET NEXUS』の開発協力。アニメ映画「ガールズ&パンツァー 最終章」での一部開発協力などがあげられる。また最近では自社開発にも力を入れており、協力アクションゲーム『TrinityS』をリリースしているほか、現在スーパーマン系アクションゲーム『UNRESTRICTED』を開発中。UE4アセットも数多く制作しており、Unreal Engineを取り扱う国内ゲームスタジオとしてはトップクラスの実績を誇っている。
Indie-us Gamesはこれまで中途採用をしていたが、事業規模拡大にともない採用も拡大展開。その中で、今年はじめて新卒採用をしていたという。Indie-us Gamesはそうした新卒採用の中で複数名に早期内定を出しており、4か月ほどの猶予を提示。内定承諾を待つ中で、その全員から辞退を申し込まれたという。全員が大手ゲーム会社に行ってしまったそうだ。
昨今では、大手ゲーム会社間で人材獲得の競争が激化している。各社初任給上昇を含めた賃上げを実施しており、ゲーム開発者はさらに高度人材になりつつあるわけだ。一方で待遇の引き上げをできたのは大手が中心。そこまで大きな利益をあげられない中小にとっては、採用において苦戦が強いられているわけだ。Indie-us Gamesは、Unreal Engineに精通する人ならばまず知っている会社で、事業拡大中。いま勢いのあるゲームスタジオのひとつである。そうした勢いにもかかわらず、中小であることから採用に苦労しているという点でもショックは大きい。
なお中村氏は学生を責めることは一切できないとし、自身の力不足であることを強調。安定している大手に行くことは仕方ないとしている。また内定を出した学生は優秀であったとも認めている。学生は悪くなく仕方ない気持ちはありつつも、やるせなさをこぼしているのだろう。
しかし悪いことばかりではないようだ。前述の内定辞退ツイートが反響を呼んだ影響で、新しく2桁以上の応募がきているという。ひとりひとり対応していくとし、ほのかな喜びをにじませた。かたちはどうあれ、Indie-us Gamesというスタジオの存在や同社が採用を強化していることを知らせるきっかけにはなったようである。業界関係者からもさまざまなエールが送られており、中村氏およびIndie-us Gamesは、前を向いているようだ。これを機に同社に興味をもった人は、採用ページを覗いてみるのもいいだろう。
いずれにせよ今回の一幕は、今ゲーム業界において採用が難しくなっていることを如実に示す例ではあった。裏を返せば、ゲームクリエイターが、より重要視されつつあるということだ。こうした流れはしばらく続きそうだ。
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