「ロード・オブ・ザ・リング」の世界観をもとにしたアクションアドベンチャーゲーム『The Lord of the Rings: Gollum』を手がけたDaedalic Entertainmentが、ゲーム開発事業から撤退するようだ。同社の地元ドイツの業界誌GamesWirtschaftが報じている。
Daedalic Entertainmentは、ドイツ・ハンブルクに拠点を置くパブリッシャーでありデベロッパーだ。2007年に設立後、パブリッシャーとして多数のインディーゲームを販売。担当したタイトルとしては、『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』や『Unrailed!』『Witch It』『Godlike Burger』『Barotrauma』などがある。一方でデベロッパーとしては『Deponia』シリーズでよく知られ、ほかに『State of Mind』や『Blackguards』シリーズなども開発。そして今年には『The Lord of the Rings: Gollum』を発売し注目を集めた。
ただドイツメディアGamesWirtschaftによると、今後はゲーム販売事業に集中し、ゲーム開発事業については終息させるという。Daedalic Entertainmentは同メディアを通じて声明を発表。同社内では、難しいターニングポイントを迎える事について議論したうえで、新たな船出を切る決断をおこなったとして、事業再編の事実を認めた。また、この影響で25名のスタッフがレイオフの対象となることも明かされた。解雇したスタッフについては、同社のネットワーク内で新たな職を見つけられるようサポートするとしている。
なおDaedalic Entertainmentは、「ロード・オブ・ザ・リング」の世界観をもとにした新たな作品を開発中だったが、今回の事業再編により開発中止にされた。一方で、今年発表されたばかりの『Surviving Deponia』に関しては、外部スタジオであるAtomicTorch Studioの協力のもと、開発が続行されるとのことだ。
長いあいだ続けてきたゲーム開発事業からなぜ撤退することになったのか、理由については明らかにされていない。ただタイミングとしては、Daedalic Entertainmentが開発し今年5月に発売(国内PS4/PS5版は6月に発売)された、『The Lord of the Rings: Gollum』の不振が引き金となった可能性がありそうだ。
『The Lord of the Rings: Gollum』は、映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作として知られるJ・R・R・トールキンの小説「指輪物語」の第一部「旅の仲間」で語られる出来事の裏側を描くアクションアドベンチャーゲーム。ふたつの人格をもつゴラムを主人公とし、パルクールとステルスを使い分けるアクションにて“いとしいしと”を追いかけながら、中つ国での危険な冒険をおこなう。
同作は、人気作品のゲーム化とあって大きな期待を集めていたが、発売後には厳しい評価に直面。描かれた世界観については高く評価する声もあったものの、プレイヤーからは最適化不足による低いパフォーマンスやバグ、ビジュアル品質の低さなどが指摘された。その結果、レビュー集積サイトMetacriticのメタスコアでは、今年発売されたタイトルの中でのワーストを記録(当時)。またSteamのユーザーレビューでも、現時点で34%のみが好評とする「やや不評」ステータスとなっている。
そうした評価を受けてDaedalic Entertainmentは発売翌日、「がっかりする体験(underwhelming experience)」を提供してしまったとしてユーザーに謝罪した(関連記事)。
Daedalic Entertainmentは2022年に、フランスの大手パブリッシャーNaconの傘下に入っている。『The Lord of the Rings: Gollum』の売り上げ面については定かでないものの、期待された大型作品が極めて低い評価を受けたことで、NaconはDaedalic Entertainmentのゲーム開発事業に見切りをつけたのかもしれない。
なお、『The Lord of the Rings: Gollum』の改善を目指すパッチ開発については、引き続き進められているという。また、Daedalic Entertainmentは今後はパブリッシャーとして事業を継続する。今後発売予定のタイトルとしては先述した『Surviving Deponia』のほか、『Capes』『Wild Woods』『New Cycle』などが予定されている。