デベロッパーのAcid Wizard Studioは6月29日、サバイバルホラーゲーム『Darkwood』の売り上げが150万本を突破したと発表した。非常に大きな数字であるが、同スタジオが本作の“公式海賊版”を配布したうえでの成功とあって注目を集めている。
本作は、“忌まわしきもの”が存在する不気味な森からの脱出を目指すサバイバルホラーゲームだ。見下ろし型視点が採用され、プレイヤーは日中は森をさまよい物資を調達。探索時に身を守るために、物資をもとに武器や道具を作成する。そして夜の森は危険が激増し、得体のしれない“なにか”がプレイヤーに迫りくるため、朝になるまで拠点で耐えるのだ。
『Darkwood』は2017年にPC向けにリリースされ、その後Nintendo Switch/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S版も配信。日本一ソフトウェアから日本語版も発売された。本作はメディア・ユーザー双方から高い評価を受け、Steamでは現時点で約1万4000件のユーザーレビューが投稿され、その内の94%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得。最近のレビューに限れば「圧倒的に好評」ステータスとなっている。
開発元Acid Wizard Studioは本作のPC版のリリース時、YouTuberやブロガーなどと称して本作のレビュー用Steamキーを求める大量のメールに悩まされたり、またお金を節約せざるを得ない事情があるユーザーがSteamの返金機能を利用していることを目にしたりし、残念な気持ちになったと述べていた。そうしたことを受けて同スタジオは、なんと『Darkwood』の当時の最新バージョンのTorrentファイルを放流。すなわち、“公式海賊版”を配布する決断をおこなったのだ。
Steamキーを希望する自称レビュアーは、実際は鍵屋とも呼ばれるキーリセラーにSteamキーを横流ししている場合が多いとされる。そうした人物への対応と、お金のないゲーマーのために、無料で本作をプレイできる手段を用意したようだ。当時同スタジオは、海賊版をプレイして気に入ったなら、セール時にでも良いのでSteamなどの正規ストアで本作を購入することを、いつか検討してほしいと呼びかけた。
それから約6年が経った昨日、本作の売り上げが150万本を越えたことが明らかにされた。同スタジオは、公式に海賊版を配布したことが売り上げにプラスに働いたのか、逆にマイナスに働いたのかは分からないものの、いずれにせよ予想を大きく上回る結果となり、非常に満足しているとコメント。また、海賊版の配布を公表したことをきっかけに、鍵屋にまつわる問題について人々の間での認識も広まったとして、それについても良い結果になったとした。
Acid Wizard Studioはポーランドに拠点を置くスタジオで、スタッフらが子供の頃はゲームは非常に高価で、海賊版が公然と販売されていたという。そうした海賊版を通じてゲームに親しむことがなければ、『Darkwood』は生まれていなかったかもしれないと述べる。そして、今は合法的にゲームを購入することが当たり前の状況となったが、世界にはまだゲームの購入のハードルが高い国もあるとコメント。こうした背景もあり、当時海賊版配布の決断に至ったようだ。
一般的に、ゲームメーカーにとって海賊版は、売り上げに悪影響をもたらす憎むべき存在だろう。ただインディースタジオのなかには、同様に自ら海賊版を配布した例はほかにもある。理由としては、Acid Wizard Studioと同じくゲームを買う余裕がない人のためという動機が多く、そうしたユーザーがいつか正規版を購入してくれることへの期待もしばしば語られる。また、何よりまずは作品を手に取ったもらうためのPR効果を狙うなど、小規模スタジオならではの悩みが背景にある場合もあるようだ(関連記事1・2・3)。
『Darkwood』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)/Nintendo Switch/PS4/Xbox One/Xbox Series X|Sおよび海外PS5向けに配信中。Steamでは、現在開催中のサマーセールの対象となっている。なお、プラットフォームによって日本語対応の状況が異なるため注意されたい。
またAcid Wizard Studioは、久々の新作となるターン制サッカーゲーム『Soccer Kids』を現在開発中。その初期バージョンにあたる『Soccer Kids Alpha』が、PC(Steam)にて無料配信されている。