対戦格闘ゲーム『スカルガールズ 2ndアンコール』最新アプデにて“表現規制”実施。Steamでは“レビュー爆撃”が発生する事態に

Hidden Variable Studiosは6月27日、『スカルガールズ 2ndアンコール』およびモバイル向けの『Skullgirls: 対戦型RPG』に対し、最新アップデートを配信開始した。アップデートの内容が原因で、Steamでは“レビュー爆撃”まで発生する事態となっている。

デベロッパーのHidden Variable Studiosは6月27日、対戦格闘ゲーム『スカルガールズ 2ndアンコール』およびモバイル向けの『Skullgirls: 対戦型RPG』に対し、最新アップデートを配信開始した。ただ、アップデートの内容が一部ユーザーの反発を買い、Steamでは“レビュー爆撃”まで発生する事態となっている。海外メディアPC Gamerなどが報じている。


『スカルガールズ 2ndアンコール(Skullgirls 2nd Encore)』は、Reverge Labs/Lab Zero Gamesが手がけた2D対戦格闘ゲームだ。もともとは『スカルガールズ(Skullgirls)』として2012年にリリースされ、その後アップデートを重ね現在のタイトルへと更新された。本作ではカートゥーン調のビジュアルが採用され、ユニークなキャラクターが多数登場。『ヴァンパイア』シリーズなど日本の格闘ゲームから影響を受けるゲームシステムなども特徴となっている。

本作はPC版のほか、これまでには多数のコンソール向けにも移植。そしてゲーム内容がアレンジされたモバイル版も配信され、現在はモバイル版を手がけたHidden Variable Studiosがシリーズ全体の開発を指揮している。最初のリリースから10年以上経ついまも開発が続けられ、新規キャラクターの追加などが進められている。

今回配信されたアップデートでは、プレイ中のキャラクター表現やストーリーモードのカットシーン、またデジタルアート集DLC「Digital Art Compendium」に収録されたアートワークに対して多数の調整が実施。パッチノートには多数の調整項目が挙げられているが、具体的にどのような調整がおこなわれたのかについては多くにおいて記載されていない。

そこでYouTubeチャンネルLalitoTVが、該当シーンのアップデート前後を比較する2本の動画を公開している(下に掲載)。動画に収録されたのは調整された項目の一部だそうだが、だいたいの方向性が見えてくる。もっとも目立つのは、ブラックイーグレットの隊員の軍服から、赤い腕章が削除された点だ。ブラックイーグレットは、本作のプレイアブルキャラクターのひとりパラソールの王家に仕える軍隊で、一部の技やカットシーンに登場。ナチス・ドイツを想起させる軍服のデザインであることから、腕章が削除されたのかもしれない。

また一部女性キャラクターについては、露出した下着の色が暗めに変更されたり、あるいは衣装などを一部描き変えて、露出していた下着や肌が隠されたりといった修正が実施。性的な表現を抑えようという意図が感じられる調整だ。暴力・流血を描いた一部アートワークについても、修正されたり削除されたりしているとのこと。

このほか、かつて本作の開発を率いたMike Zaimont氏がボイスを担当した「Soviet Announcer voice pack」は削除された。以前Zaimont氏によるハラスメント行為が告発され、本作ではそれをきっかけに、同氏を排除するかたちでの新たな開発体制に移行したという経緯がある(関連記事)。


今回のアップデートについてはコミュニティ内で大きな注目が集まっており、批判の声も渦巻いている状況だ。特に表現の修正・規制に対する批判が多い。見方によってはセンシティブな表現が含まれていたかもしれないが、これまで特に問題とされてこなかったものが、突然修正されたという不可解さが背景にあるようだ。また、オリジナルスタッフが手がけ親しまれてきた表現が、先述したハラスメント告発後に現れ開発を主導するようになったHidden Variable Studiosによって改変されたように見える構図も、ファンが不満を募らせる一因となっている模様である。

その結果、Steamではアップデート配信直後から不評レビューが殺到し、いわゆる“レビュー爆撃”が発生。レビュー爆撃とは、短期間に大量のレビューを投稿することで、特定タイトルのレビュースコアを意図的に操作する行為のことだ。もともと本作は好評率が非常に高い作品であったが、本稿執筆時点で最近のレビュー(直近30日間)ステータスが「やや不評」にまで落ち込むこととなった。レビュー内容でも、上述したような表現修正・規制への批判が多くみられる。Steamの掲示板でも、関連するトピックが数多く投稿され議論されている状況だ。


今回のアップデート配信に先立って、Hidden Variable Studiosの共同設立者でクリエイティブディレクターを務めるCharley Price氏は、アップデートの意図を説明していた。同氏は、『スカルガールズ』はさまざまなスタッフの貢献によって彩られてきた長い歴史があるとした一方で、一部のコンテンツにおける過去の決定が、本作を真にユニークかつ特別なものとすることを阻害してきたとコメント。そのため、本作に対する同スタジオの価値観と今後の幅広いビジョンをより適切に反映させるべく、一部のコンテンツに変更を加える決定をしたとのこと。

変更点のひとつ、ブラックイーグレット隊員の軍服については、もともと抑圧的な軍事政権をイメージして制作されていたが、その表現が“現実の扇動集団”に近すぎるという判断がなされたという。またキャラクターのセクシュアリティの表現に関しては、本作の物語上の意味はあるものの、搾取的でないかたちに調整したと説明されている。

Price氏は、今後『スカルガールズ』の世界観を拡大させていくうえで、必要な変更であったとコメント。そして、こうした変更について納得できないファンもいるかもしれないとしつつ、現在の開発チームの全スタッフが長い時間をかけて慎重に検討を重ねた結果であるとして理解を求めた。


またPrice氏は、今回のアップデートによる表現の変更などについて、これ以上議論するつもりはないとも述べている。最終的な決定であり、以前の表現に戻すことはないということだろう。ただ、コミュニティからは多くの反発の声が上がっている状況。開発元はそれを無視して押し通すのか、あるいは何らかの歩み寄りをみせるのか、今後の対応が注目されそうだ。

『スカルガールズ 2ndアンコール』は、PC(Steam)やPS4/Xbox 360(後方互換対応)など向けに国内配信中。また『Skullgirls: 対戦型RPG』は、iOS/Android向けに配信中だ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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