『レッド・デッド・リデンプション2』でシニアアニメーターなどを務めたJason Barnes氏は6月10日、飼い犬のEinstein Barnesが亡くなったことをInstagramで報告した。彼は本作に登場する犬、カインを演じていた。PC Gamerが報じている。
『レッド・デッド・リデンプション2』(以下、RDR2)はRockstar Gamesが2018年にリリースしたオープンワールドゲームだ。舞台となるのは、西部開拓時代末期のアメリカ。この時代では、移民の増加とフロンティアの消滅とともに開拓時代は終わりに近づき、アメリカは近代工業社会へと変化を遂げようとしていた。ガンマンと無法者が姿を消しつつある時代の変わり目真っ只中で、主人公であるアーサーを含む無法者たちは、現代化の波から逃れるべく、アメリカ中部(ハートランド)およびフロンティアの過酷な大自然を冒険することになる。
そんな本作には、ゲーム内で「カイン」という犬のキャラクターが登場する。カインはクレメンス・ポイントで初めて登場し、迷い込んでいたところをジャックに見つけられる。そこでダッチが犬を飼うことを許可し、カインという名前が付けられるのだ。Einsteinはモーションキャプチャで、このカインのゲーム内の動きを演じていた。下の動画ではカインがジャックに撫でられる際に、少し頭を差し出している様子が見られる。こうした繊細でリアルな犬らしい動きは、Einsteinの演技によるものというわけだ。
PC Gamerによると、Jason Barnes氏がこの俳優犬Einsteinと出会ったのは、動物保護施設だったそうだ。彼は子犬だった時に引き取られ、アニメ「カウボーイビバップ」や映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の影響によりEinsteinと命名された。その後同氏によって、彼は介助犬として訓練されていたという。
そしてJason氏が昇進してRockstar Gamesのニューヨークオフィス勤務になった際、Einsteinも『RDR2』の制作に関わるようになったという。彼は当初、犬用のモーションキャプチャスーツの着用テスト係であった。しかしその際、彼が介助犬として訓練を積んでいたので、辛抱強く座って待てる点などが注目を集め、モーションキャプチャ役として抜擢されたそうだ。役者も驚くほど完璧にモーションキャプチャ役の務めを果たしていたといい、「being the best dog(最高の犬である)」と開発メンバーに評されていたとのこと。彼の唯一の問題点は、当時のアシスタント・アートディレクターLuke Howard氏など特定の人物に対して、時々“嬉ション”をしてしまうことだったそうだ。
そんなEinsteinの死が、6月10日にJason Barnes氏によってInstagramで伝えられた。享年13歳であった。同投稿には彼の死を悼む声が集まっており、また彼を“Good boy”と称えている。また『RDR2』の開発メンバーからは、出会ったときの思い出なども寄せられている。。
『レッド・デッド・リデンプション2』では以前、ゲーム内の動物のリアルさに教育的価値がある可能性が示唆されて話題になったことがある(関連記事)。本作には230を超える種類の動物が登場し、性別や品種の区別もおこなわれている。そうした生態系や見た目の徹底ぶりが、生物学の学習に役立つのではないかと提唱されていた。このリアルさは、開発陣による徹底した調査とモーションキャプチャなどの技術によって成立していると考えられるだろう。
カインもそうしたゲーム内の動物の1匹であり、Einsteinの活躍によって繊細でリアルな犬らしい動きがもたらされていたわけだ。彼の名演はこれからもゲーム内に生き続けることだろう。
『レッド・デッド・リデンプション2』はPC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS4/Xbox One向けに発売中だ。