医師開発・感染症勉強ゲーム『細菌・真菌を学ぶRPG』PC向けに無料配信開始。“RPGとしてはクソゲー”しかし勉強になる


救急科および集中治療専門医であるさまんさ氏は、6月6日に『細菌・真菌を学ぶRPG』を無料公開した。Windows/macOS向けに配信中、同氏のブログよりダウンロード可能だ。またPLiCyからブラウザでもプレイ可能。

https://twitter.com/samantha_blog5/status/1665877258861682691

『細菌・真菌を学ぶRPG』は、感染症について学ぶことのできるゲームだ。舞台となる世界では、魔王が呪いを振りまき害を及ぼしている。この呪いによって、主人公セフェムスの故郷であるβ-ラクタ村は壊滅。村の生き残りとして、主人公は兄弟のペニシーと共に世界を救う旅にでることになる。

本作では、各地域のダンジョンを巡ってストーリーを進めていく。ダンジョンにはそれぞれ異なる感染症についてのテーマが設定。ランダムエンカウントで、テーマごとの菌が敵としてあらわれるのだ。戦闘では抗菌薬を投与することで、敵に攻撃することができる。敵となる菌の種類に適した薬を選択すれば大ダメージが与えられる。一方、無難で対処範囲の広い薬はダメージ量が低いように設定されている。それぞれの菌に効果のある薬を学んでいくことが重要となるわけだ。

この戦闘システムには、抗菌スペクトルという実際の医学における考え方が反映されている。この場合におけるスペクトルとは抗菌薬がカバーする(有効である)細菌の範囲のことを指す。広く有効性が期待できる場合を「広域」と呼び、一方で、特定の菌など比較的狭い範囲に効果が限定される場合を「狭域」と呼ぶ。本作においてはそうした性質を反映し、狭域かつ適切な薬を選んだ場合に大ダメージを与えることができるようになっているようだ。なお、序盤は覚えている技(抗菌薬)が少ないため、適切な技がなければ逃げることが推奨されている。


また本作では、新たな知識を身に付けていけるよう配慮もされている。ダンジョン内にはTips猫が点在。話しかけることで、感染症の重要事項やその覚え方について解説してくれる。一度見たTipsはメニュ―から再確認可能。実臨床に役立つ知識が全部で111種も収録されているそうだ。また、一度出会ったモンスター(菌)を確認できる図鑑機能も搭載。菌についての概要や、効果のある抗菌薬をいつでも学ぶことが可能だ。なお本作では、全部で42種類の菌が登場する。

なお専門知識をもたない筆者がプレイしたところ、本作はかなり困難に感じられた。本作のプレイにはある程度の事前知識が必要とされそうな点は留意してほしい。本作開発者からは、抗菌薬がカバーする範囲を示したスペクトラム表を片手にプレイすることで、反復練習として勉強することが勧められている。また、「RPGとしてはクソゲーですが勉強にはなるはず」と開発者自身で伝えている点からも、学習を主軸に据えた作品とわかる。


本作を手がけるのは、救急科および集中治療専門医であるという、さまんさ氏だ。同氏が学生の頃から「こんなゲームがあったらいいな」と思っていたことが、本作開発の動機となったとのこと。同氏はブログを運営しており、以前より集中治療に関する知識などを情報発信してきた。本作もこの活動の一環として、感染症について学ぶ人にとって役立つように開発されたのだろう。なお、本作のアプリ版も開発中とのこと。

細菌・真菌を学ぶRPG』はWindows/macOS向けに配信中。また、PLiCyからブラウザでもプレイ可能だ。